カレイドスコープのむこうがわ
【カレイドスコープのむこうがわ】 三木遊泳/ぷよ 電撃文庫
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義理じゃないけど、チョコいる?

えーー……色々考えてみたんですが、こないな事を言われて渡されたチョコレートが本命チョコ以外であるという可能性があるのでしょうか。
毒入りではあるまいに。
渡されたチョコを食べられず、悶々と悩み続けるのはよく分かる。チョコを渡されたものの、どう接したらいいのか分からず何となく距離を置いてしまうのもよく分かる。
でも、だからと言って結論を先延ばしにして、結局彼女の気持ちに気付かないことにしてしまうっていうのは、非常に非常に井上さんが可哀相なんじゃないだろうかーーー! と絶叫してみる。
いや、自信がないのは分かるんだ。あんな可愛い子が自分なんかに好意を抱いている、なんてことを考えてしまうだけでも、何を自惚れているんだと恥じ入ってしまうのもよく分かる。
なにより、井上さんに道弘はちゃんと好意を抱いているだけに、願望を現実と混同してしまってはいけないと自戒してしまうのもよく分かる。
だけどね。

義理じゃないけど、チョコいる?

なんて言われて、中学卒業したあと、別々の高校に通うようになっても連絡取り合って逢うこと頻り。余人を交えず二人きりで、わざわざ勉強を教えて貰ったり、買い物に付き合ったり。
そこまでしておいて、単なる元クラスメイトの友人で済むはずなかろうが!!(激怒

まー、これがこの井上さんが可愛らしいんだわ。秘恋とでもいうのだろうか。折々に見せる、自分の気持ちに気付いて欲しいという素振りが、なんとも初々しく愛しい。
義理じゃないけど、チョコいる? なんて台詞、かなり勇気を込めて言ったはずなのに、何となく流されてしまってはさすがにまた勇気を振り絞って、とはいかないものなあ。学校が別、というのもかなりのハンデ。逢う機会を作るのもそれなりに大変だ、という描写が何度か挟まれているし、関係が気まずくなってしまえば疎遠になるのもすぐ、というぐらいには生活圏に距離が空いてるし、慎重になるのもムリは無い。
「はじめての遊園地」のラストで、自分とは遊園地に行ったことの無い未知弘が知らない女の子と行っていて、あまつさえ自分は苗字で読んでるのに相手は下の名前で道弘を呼んでいるのを目の当たりにしたときの、井上さんの反応が可愛すぎるのですがw
愕然としながら、物凄く必死にどもりながら自分もみちひろくん、と下の名前で呼んで対抗してみたり、あとでむくれて道弘の頬っぺたを引っ張ってみたり、と。
すみません、どうしようもなく堪能させていただきました。

と、井上さんとの嬉し恥ずかしなやり取りを堪能できる日常とは別に、この話、メインは一応非日常なのであります。
元が短編ということもあり、五編収録されている本作品、話は続いているもののそれぞれの短編は独立しており、読後感は一冊の物語を読んだというより、五つの話を読んだ、というような感じ。
意外と、ちゃんと短編としてそれぞれが話を上手くまとめているせいだろうか。
全体的にほわん、とした空気の物語で、けっこうこれ、お気に入りかも。
むしろ伝奇的な筋立てに拘泥せず、この空気に沿う形で話を作っていってくれた方が、方向性としてはいいような気がするんだけど。
続き、出るんですよね? 楽しみにしてます。特に井上さん方面w