百目の騎士 1 (1)
【百目の騎士(1)】 原作:小池倫太郎 作画:村崎久都 電撃コミックス

ライトノベル畑の人にとっては、村崎久都さんといえば【Dクラッカーズ】の挿絵の人、なんじゃないですかい?
あの作品のイラストを見てたら知っていると思うのだけれど、この人の描く人間というのは、どえらい『凄味』を帯びている。
見た瞬間、ゾワゾワゾワっと肌が逆立つ感覚が味わえる、そんな絵を描ける人であり、喜怒哀楽その全ての表情で、この感覚を味わわせてくれる人でもある。激しい感情を露わにする顔、秘めた思いを僅かに垣間見せる静かな面持ち、どうしようもない苦しさに慟哭する泣き顔、様々な人の思いをイラストにして見る人に心の痺れを与えてくれるイラストレーター。
というのが、これまでのこの人へと感想だったのだけれど。
どうやら、そのセンスはマンガになっても全く変わっていないようだ。
素晴らしい! ゾワゾワさせられまくりでのた打ち回ったさ!(笑

舞台はSF? 一応、異世界の軍隊もの。それも正規の軍人を輩出するための軍学校が舞台ということで、学園モノの要素も含まれているのか。
こういう軍学校を舞台にした話というのは、一定の量があって一つのジャンルを形成しているようにも思えるけれど。

組織における規律と伝統と慣例という理不尽の中で、変わり者ではぐれモノで、譲れない自分のルールを内に秘めた二人の若者が指導役と転入生として組まされる。
この納得しがたい理不尽の檻を息を潜めてやり過ごすつもりだったヒロイン(表紙の人)は、だが新たに編入してきた問題児を押し付けられ、暴れ者で子供で世渡りベタな彼に振り回されるうちに、奥へと引っ込めていた牙を形の無い理不尽にむかって徐々に剥き出しはじめることになる。
微妙にコレ、姉弟モノでもあるのよね、帯にもあるとおり。ただ、弟をベタベタ甘やかす話でもない。この姉ちゃん、ものすげえ強面だし厳しいし優しくないし。いっそ辛辣ですらある。
でも、理不尽ではない。彼女は一切感情をむき出しにせず、無暗に彼を責めたりせず、常に理を以って少年を諭す。少年も、自分に襲い掛かってくる理不尽に本能のまま噛み付き暴れるものの、彼女の言うことは素直に聞くあたり、実のところちゃんと言い聞かせれば聞くだけの分別を持ってる小僧だというのが、伝わってきて面白い。無軌道で、奔放に見えるんだけど(笑
彼女も、そういう少年の本質に気付いているので、周りから逸脱しがちな少年をいたぶり傷つけようとする理不尽が、段々と我慢できなくなってきてるわけだ、こりゃ。
自分に向けられるならガマンできる。ただ、失望し、何も期待しなくなるだけだ。目を伏せ、耳を塞ぎ、黙ってやりすごしていれば、いずれ此方から背を向けて立ち去る事になる。
ところが、この少年の御守を押し付けられたことで、降り注ぐ火の粉を振り払っているうちに…………
この第一巻、なんだか、狸寝入りを決め込んでいた百獣の王が、ムクリと身を起こしたような、そんな感がありましたよ(笑
いや、想像以上にこれは面白かった。