BLACK BLOOD BROTHERS 7 (7)
【BLACK BLOOD BROTHERS 7.王牙再臨】 あざの耕平/草河遊也 富士見ファンタジア文庫
Amazon Bk1


……絶句

これに言葉は必要か?


困った。どうしよう。読み終わったあと、立ち上がってわけもわからないまま部屋の中を歩き回っている自分がいた。
行き場のない衝動。
まごうことなき、活劇小説の最高峰。
もう最初から最後までクライマックス。猛りっぱなし興奮しっぱなし泣きっぱなし。
すげえよ、すごすぎるよ。とんでもなさすぎるよ。ありえないよ。ふざけるなよ。
ついに特区へと攻め寄せてきた九龍の血統との全面闘争。崩壊していく人間と吸血鬼の楽園。
熱い。熱い。敵が熱い。味方が熱い。熱死しろというのか、こんちくしょう!
あざの耕平作品の恐るべき点の一つは、たとえ敵方と味方側を俯瞰する読者視点を完全に入れ替えて、つまり敵方を主人公側として描いても恐らく殆ど遜色なく一つの傑作として成り立つであろうところだと、今回改めて認識した。それぐらいに、カーサをはじめとした九龍の血統の面々のキャラクターの掘り下げは深く、彼らの絆は熱く強靭で複雑だ。
カーサ、ザザ、ラウ、ナブロ、ダール、ワイン。ヤフリー。ハンス。マーヴェリック。彼ら九龍の血統(クーロンチャイルド)九姉弟は強大にして凶悪な吸血鬼の一党だが、決して無敵ではない。彼らの王が眠る墓所、特区には東の龍王という絶対的な敵がおり、特区自体にも龍王セイのはりめぐらした結界が敷いてある。むしろ劣勢は攻める側の九龍の血統の方とも言えるのだ。
だが彼らは悪辣なまでの智謀と姦計を駆使して、特区へと敢然と攻め込んでくる。
視点を変えてみてみれば、彼らの戦い振りはまったく見事としか言いようが無い。勇知を従えたいささかも卑下するところのない、気持ちの良いほど素晴らしい闘争だ。

だがしかし、それは特区からみれば悪夢でしかない。
次々に打ち倒される味方。崩壊していく平和と日常。絶望は津波となって押し寄せる。それを押し返し、逆に追い詰め、だが逆転され、再度盛り返す。
呼吸すらも忘れてしまうほど熱い熱い、戦い。戦うものたちの覚悟と意思。

あまりにも、あまりにも大きな犠牲の数々。信じられない人たちの退場劇。喪われたものの大きさは、あまりにもあまりにも大きすぎて、読んでる此方まで茫然自失となってしまった。
第二部の完結は、特区側の完全な敗北をもって終わる。敗北だ。負けだ。彼らは追い散らされ、背を見せて逃げるしかなかった。楽園を、新たな故郷を、自分達のホームを捨てて、彼らは逃げ出すしかなかった。

だが、刮目せよ。

逆襲がはじまるぞ!

あざの耕平の真骨頂はまさにここから。ここからなのだ。
地獄の底から、絶望の淵から、奈落の下から。かすかな希望をその手に握り、彼らは這い上がってくるのだ。泥だらけになって、血だらけになって、それでも諦めず、歯を食いしばって。
はじめるのだ。
逆襲を。
希望は失われていない。
去っていった人々は、だが後に引き継ぐものを遺して行った。想いを、力を、希望を、世界を。
彼らは、もう一度戦いを挑むのだ。我が家を、取り戻すために。

第三部が、気が狂うほど待ち遠しい。




しかし、今回は本当に放心状態にさせられた。
まったく思い掛けない人物の舞台からの退場。全然想像していなかっただけに、ダメージ大きいよ。この反響は物凄いと思う。
しかし、少なくとも片割れに関してはしっかり引き継ぐ人がいてくれたことに、感慨と感動を抑えられない。
自分としては残念だったのが、新キャラのジャネットのビジュアルがなかったことかなあ。赤い牙の隊長という凛々しい物腰と同時に、ケインに憧れ思慕してる少女らしい側面。そして壊滅的な被害にも屈せず毅然と破滅に立ち向かうカンパニーへ惹かれ傾倒していく姿は読者である自分の感情と完全にシンクロしていて、もうなんか今回が初登場にも関わらず、一気に魅力爆発してた上にただでさえ少ないところに壊滅的な戦力ダウンを見せた特区側の貴重な仲間になってくれそうな人だというのに。
イラストがないんだもんなあ(悶絶
いや、次回以降必ずあるに違いない。間違いない。

今回は本当に喪われたものが大きかったんだけれど、その代わりにこのジャネット嬢を含め、新たな戦力として加わりそうな面々も増えている。
足りないと嘆かれていた手駒は、ひそかに整いつつあるのかもしれない。
次に攻めるのは此方からだ、というわけだ。くわあああああ、燃える。燃え滾る。
焼死しそうだ。マジで。早く、次を出してくれぇ。
次はミミコが首になった後の短編集だろうけど。