暗闇にヤギを探して 3 (3)

【暗闇にヤギを探して 3】
 穂史賀雅也/シコルスキー MF文庫J
Amazon bk1


これは、打ち切り喰らったのかなあ。
一つ一つ手作りで積み上げて、丹念に装飾を練り上げていく。そんな手法の描き方だからこそ、後半の急ぎ足駆け足な展開は目に付いてしまうわけで。

ともあれ、それをしてなお。

素晴らしい!!

時々ぽんっと出てくるんだよなあ。こういう言葉の魔術師みたいな人が。
最近じゃあ思いつくのが桜庭一樹とか橋本紡みたいな人なのだけれど、とにかく独特。その人にしか作り出せない世界の醸成。
それでいて、来るものを拒まない優しさと構いすぎない素っ気無さを織り交ぜた柔らかい世界観。
こればっかりはセンスとか才能の話だよなあ。
狙撃と恋愛の例え話には、まったく感心させられた。あれは、実に上手い表現だわ。


二巻の最後で先輩にきっぱりと告白された合人。ズルズルと曖昧なラブコメ関係が続くのかと思っていただけに、かなり衝撃的な展開だったわけなのだけれど。
三巻をいったいどうはじめるのかと思っていたら。

風子キターーーーーっ!!

風子視点での前半戦は、まさに秀作。今まで合人視点からだっただけに、なかなか読みづらかった彼女の内面が別々の高校になってしまってからの話とともに切々と綴られてて、とにかく素晴らしい出来栄え。
恐らく、後半の展開はもう1巻かけて先輩と風子、二人の心中を描きながらじっくり広がっていく話だっただろうだけに残念だなあ。
それとも、話を締めるために急遽付け加えた展開だったのだろうか。そうは思わないんだけれど。いや、既にあの時点で合人の気持ちが決まっていただけに、蛇足といえば蛇足か。
それとも、もしかしたら気持ちが固まる前にああいった事になってしまう予定だったのか、とも推察できるな。
ともあれ、所詮それらはIFの話。
なんだかんだと欠点はあるけれども、これは紛うことなき傑作恋愛譚の類である。もっともっと、浸っていたかったなあ。

これを読まされた以上、次回作は、はっきり言って尋常じゃない期待を寄せてしまう。