プリンセスハーツ 麗しの仮面夫婦の巻

【プリンセスハーツ 麗しの仮面夫婦の巻】 高殿円/香代乃 小学館ルルル文庫
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し、しまったーー! これ、パルメニアシリーズだったのか! ある程度、公式サイトの紹介文とかは見てましたけど、詳細に調べてはいなかったので読み始めるまで気がつかなかった。
というか、これはいつの時代なんだ? パルメニア王家の家系図が掲載されてた本があったはずなんだけど、どれだか思い出せない。遠征王と秘密の花園だっけか。もし思い出しても、魔窟から発掘できるかどうか。
ちょいとウェブ上で調べたら、作品中のパルメニア王ゾルターク?世はミルドレッドの甥っ子で、アイオリアの曾祖父に当たる人物であるらしい。
ということは【そのとき】シリーズと【遠征王】シリーズの間にあたるのか。
しかし、こんなところで何をやってるんだミゼリコルドは(汗

というわけで、新レーベル、ルルル文庫における高殿円氏の新作はパルメニアシリーズの新作でした。世界観はガッチリ固まってるし、構想もおそらく古くから組み立てていた話の一つなのだろうから、ある意味、手堅いなあ。
ところで、この作品中にゲルマリックという言葉が幾度も出てくるのだけれど、パルメニアシリーズって【銃姫】とも繋がってるんでしたっけか。そこらへん、以前別の作品のどっかで描写あったっけ。あったような気もするんだけど。

これは良い高殿円。
この人は、マグダミリアといい、遠征王といい、そのときといい、宮廷内の陰謀劇に個々人の鬱屈した感情や狂気を絡めた話を作ると、物凄くエッジの利いた歯応えのある作品になるんですよねえ。
少年時代、嫡子にも関わらず両親に疎まれ、保護国であるパルメニアに人質として送られていたアジェンセン公国公子ルシード。そこで彼は第一王女メリルローズと恋に落ちる。国に戻り、内乱を起こして父王と母を倒し、弟を幽閉して大公となったルシードは、国王の失政で国力の凋落著しいパルメニアから、メリルローズを娶ることに成功するのだが、パルメニアが送ってきたメリルローズは偽者で……。

というわけで、偽メリルローズとして輿入れしてきたそっくりさん、高級娼婦の娘ジルとルシードの仮面夫婦生活のはじまりはじまり。
いや、これは面白かった。
まずは第一巻ということで、二人のキャラクターとお互いの関係、彼ら二人を中心としたアジェンセン公国の内情と、パルメニアとの微妙な関係、といったところに焦点を当てた話になっている。
でも、どうしてジルが偽メリルローズとして送られてきたのか。ジルの本当の目的。ルシードとジルと腹心マシアス、この三人の間に結ばれた盟約の詳しい事情。ジルがどうしてミゼリコルドと契約しているのか。ルシードが内乱を起こした本当の事情と、幽閉している弟との見えてこない関係。本物のメリルローズは、今どうしているのか。とにかく、伏せられているカードがやたらと多く、それが意外と効果的に機能しているような気がする。
いやーーーーー、どうにも黒幕はあの人にしか思えないんだけど。動機はまだあっちの事情も皆無に近いのでさっぱりわからないのだけれど。
なんか、遠征王でアイオリアがものすげー酷い目にあってるという前科もあるわけで、ルシード、かわいそうなことにならなきゃいいけど。

思いの他、ジルの内面が天然系入ってて……妙に気に入ってしまった、この娘。鉄面皮でクールで理知的で冷徹。悪魔的な才知をもって、短気で単純でわがままでお人よしなルシードを国政面から支えているのだけど、中身はわりと普通の少女……なようでやっぱりちょっとどっかズレてるな、これはw
でも、想定外の事態には頭真っ白になってしまったり、自分の感情面については致命的なくらいに鈍かったり、心を読むといわれるほど人間観察に長けているくせに、一番近いところにいるルシードについてはわかっているようで、理解しきれない部分があって混乱したりと。
まあ、よく見ると可愛らしい女の子そのままじゃないですか(笑
とはいえ、国政に対しての手練手管は、可愛らしい女そのまま、なんて悠長なことを言えない酷薄さなんですけど。怒ったときも。

ルシードもいい意味でバカな頑固者だし、この二人の関係は見ててニヤニヤしてしまいます。
でも、あんまり酷いことを言ってやるなよ、ルシードよ。大人げないぞ、ガキか、君は。甘え方が下手くそなのは、両親に愛されなかったからなのだろうけど。子供時代を一緒に過ごした本物のメリルローズならともかく、ジルにその態度はちょっと酷だぞ。

今回の事件の黒幕については、最後の方まで予想してなかったので、ちょい愕然。てっきり、レギュラーとしてこのシリーズを引っ張っていってくれるキャラの一人になると思っていたので、わりとショックかも。
そして、あの悲痛な独白も。
悲劇におけるこの迸るような悲痛さの描写は、ほんと上手いなあ。

余談だけど、私は高殿さんの惚けたギャグ調の描写も、けっこう好きですw