封殺鬼鵺子ドリ鳴イタ 1 (1)

【封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ 1】 霜島ケイ/也 ルルル文庫

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すみません、これ読んだとき悶死しそうになりました。
だって、だって。桐子さまがっ、あの桐子婆さまがっ!

今は亡き小学館キャンパス文庫の看板作品であり、先年見事に完結を果たした傑作伝奇小説【封殺鬼】の、予想もしていなかった復活新刊。
もう、正直これが新作と知ったときは泣きそうでした。読んでる最中はあまりの懐かしさと相変わらずの内容に、悶えまくりでしたけど。
封殺鬼ファンとして嬉しいのが、新たなレーベルで心機一転再開ということで、この新作が前作シリーズをまったく知らなくても入っていける話になっていることで。これを機会に封殺鬼を手に取ってくれる人、増えないかなあ……。
いや、問題は元々マイナーなレーベルな上に既に無くなってしまってるキャンパス文庫という前作シリーズの入手が非常に困難なんじゃないか、という点なのだけど。


舞台は現代だった前作から半世紀以上遡った昭和初期。主人公は相変わらずの弓生、聖のコンビに加えて、あの先々代神島家当主の神島桐子。
前作の中篇(といっても文庫本三冊分あったわけですが)【花闇を抱きしもの】で、彼女が齢十歳にして自分を利用しようとした身内、側近を粛清し神島家の当主に座ったエピソードから四年後の話になるわけですけど、この花闇の話は人間の怨念がドロドロしていて、桐子もまだ幼い身で、過酷すぎる顛末に痛々しいばかりだったのですが。
この十四歳になった桐子婆ちゃん、いいなあいいなあ!!(婆ちゃん言うな)
表面上はあの冷酷で感情の一切を表に出さない荼吉尼の異名を異名を欲しいままにした女帝そのものなんだけど、能天気な仮面ブレイカーの聖と相対した途端、癇癪持ちで意地っ張りで強情な14歳の少女の顔が曝け出されて……って、もうこの辺で読んでて自分の頭がどうにかなってしまったのかと。
だって、あの桐子様ですよ。前作読んでりゃ伝わるでしょうが、あの冷たく怖ろしい婆様だった人が、聖相手に声を荒げて怒鳴り散らすわ、豆をぶつけて追い回すわ、露骨にシカトここうとして失敗するわ、ブチ切れて沸いてる鉄瓶投げつけるわ。

「おまえなど、バカなケダモノ、略してバケモノで十分だ !  二度とこの私を『ちゃん』づけで呼んだら許さぬぞ! このうつけ鬼!」

あの桐子さまがですよ!!!
反則、もうこれ反則。ぶっちゃけありえない。
若い、若いよ、少女だよ。

クラクラです。

しかし、聖はいつの時代も聖だなあ。弓ちゃんも、時代的には前作より此方のほうが過去なんだけど、聖への対応がこっちのほうがなんか達観しちゃってるように見えるのは気のせいだろうか(苦笑
桐子への接し方も、前作では三家の次期当主たちと最後まで距離を置こうとしていたのに比べると、わりと親身だし。

相変わらず、幽玄と現実の境目を漂うような、薄ぼんやりとした暗がりのような作品の雰囲気は素晴らしく、時代背景が混沌とした昭和初期というのも相まって、この怪しさがたまらなく五臓六腑に染み渡ってくる。
でも、ふとそのまま暗闇の奥へ奥へと沈んでいってしまいそうなところを、聖の突き抜けたような明るさが太陽の風のように全部吹き飛ばしてくれるんですよね。聖が現れると、他の登場人物までふわりと明るい光を帯びていきます。お陰で、空気自体は暗いのに、話は何故か明るく楽しい、という不可思議極まりない作りになっている。
花闇だと、あんまり聖の明るさが発揮される機会がなかったので、本当に悲壮な話に終始していたのだけど、今回は聖に引き摺られて桐子の魅力が大爆発してますなあ。

恐らく、将来的に桐子の連れ添いになるのだろう新登場の武見志郎も、つかみ所の無いふわふわとした綿雲のような人物で、非常に魅力的。仮面は冷徹、本性は短気で横暴、という桐子とどういう関係になっていくのか、この第一巻では最後の方にようやく顔をあわせたところという段階なので、楽しみは次巻以降か。
歳の差も十歳以上というのは……(にやにや
しかし、志郎ってまんま、今で言うニートだなw

神島家の家人である宇和島夫婦も、予想外にキャラ立ても良くって話や人間関係に食い込んできて、これは驚きでした。
なるほどなあ。こういう信頼できる側近を見つけることが出来たからこそ、桐子の時代の神島家は隆盛を高め、後々苦労していくわけか。

ともあれ、期待していたものの何倍も面白いものを出してきてくれました、帰って来た封殺鬼新シリーズ。この調子で、桐子の時代の話だけでなく、さらなる過去や、完結したけど現代のあの連中の話とかも書いてくれないかなあ、と期待を募らせつつ、まずはこれの続き、早く読みたいです。
いや、堪能した。