天を決する大団円 上 (1)

【封仙娘娘追宝録 10.天を決する大団円(上)】 ろくごまるに/ひさいちよしき 富士見ファンタジア文庫
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この【封仙娘娘追宝録】という物語は、はじまった当初から普通の物語とは一線を画した要素があった。
物語の帰着点が予想も出来ない、というところがそれだ。
凄くシンプルに捉えたなら、人間界に散らばった宝貝を和穂が全部集めることに成功し、仙界に戻って龍華師匠と再会する、というのがそれに当たるのだろうけれど、実のところ単純にすべての宝貝の回収に成功したところで、既に宝貝が散逸した時点で人間界の変質は致命的な域に達しており、それはもはや五仙と呼ばれる仙人の頂点に立つものたちですら修復不可能な状態であることは、和穂が人間界に派遣される際の神農と仙主の説明で明らかにされている。
人間界は、もうとっくの昔に死んでしまっていて、全く別の何かに成り果ててしまっているのだ。そこに、和穂が宝貝を回収するという行為は大海にミルクの一滴を垂らすほどの意味も持たない。
たとえ、すべての宝貝の回収に成功しても、話はまったくめでたしめでたしとならないのだ。この物語は、始まった段階で既に惨劇として終わってしまっている。
この人間界の死と変質という構造的な伏線は、後々斬像矛の陰謀や鏡閃の復讐によって読者の目にも明らかなものとして提示されていく。
そして思い知るはずだ。この物語には、最初から大団円なんてものは存在していないはずだということに。

ところが、驚くべき事に、この物語における最後のサブタイトルが【天を決する大団円】ときた。

まったく、これほど読んでいて目が回る思いをさせられる物語は生涯でも早々お目にかかることは無いだろう。
物凄い勢いで、なおかつ鮮やかなまでに収斂していく数々の伏線。
それと同時に、この期に及んで爆発的に拡大していく混沌とした状況。
この物語が、いったいどういう終わりを迎えるのか。
正直に言おう。

まったく、何一つ予想できない、っつーかわかんないよ!!!

どうなるの? ねえ、これいったいどうなっちゃうの!?
終わりどころか、ほんのちょっと先の展開からしてまったく読めないワカンナイ予想も出来ない何もわからない。
予想を斜め上、というどころの話じゃなく、完全に見失った状態。いや、上記したように最初からどこに行くか分かってなかったことを、今さらながら思い知らされたような展開に、もはや茫然自失。
それでいて、真鋼の棍。回収した宝貝の種類。程穫の遺産。静嵐。導果先生。すべてが最初から仕組まれていたような感覚には、酔い痴れるしかない。
まさに制御された混沌。
そして神の見えざる手に翻弄されるこの快感。

今、魂を鷲掴みにされている瞬間を、実感しています。すごいよ、これは。
そんでもって、上下巻編成ということで、やりたい放題に嬲られ状態orz
刃を砕く復讐者の上下巻での夢にまで見そうな凶悪な引きっぷりで、何年も何年も何年も掛けて焦らされた挙句、最後まで。本当に最後まで。
いいよ、いいですよ、構いませんよ。

今の私は、もはや二十年でも待てるぞ!

でも出来れば、今度は二年くらいで許してくださいorz

しかし、本当にこの物語の構成力は腰が抜けそうなほど感服するしかない。この人の千分の一でも、この練力が欲しいです。絶対無理だけど。