カッティング ~Case of Mio~ (HJ文庫 は 1-1-1)

【カッティング 〜Case of Mio〜】 翅田大介/も HJ文庫


これは、良かった……(ひたり中)

こういう自分の内面に違和感や歪みを感じている人物や、精神的な傷を負った人を扱ったライトノベルというのは最近珍しくないんだけど、どうにもその手の作品の筆致というものに、私には斜に構えたような、ひねた視線を垣間見てしまうのです。
「ほら、異常でしょ? 病んでいるでしょ?」みたいな。
それが悪いというわけではないし、そういった書き方が味わいに成り、独特の作風として機能しているケースも多いんだけど、中には無理矢理な、辟易とさせられてしまうようなものも少なくないわけです。
ところが、この作品にはそうしたひねた視線、人の内面の闇をこれでもかと書き露わそうとする強迫的なものが一切感じられない。
あくまでテーマとして心の歪さや傷、違和感を扱い、非常に冷静に、なおかつ『真摯』にテーマに向き合っている。
それらを異常なものとして扱うのではなく、普通の人の心の在り様の一つの形として触れているのだ。
だから、デキモノに触れるような扱いではなく、一人の少年と少女が出会い、交流を重ね、お互いを想いあうようになる、という当たり前といえば普通すぎるくらい当たり前の特別なことなど何一つない人と人との関係によって、互いが持つ傷と違和感への恐れと疑問を解きほぐしていく。
その描き方が、本当に素晴らしい。
抑制の効いた、でも真摯でひたむきな青春モノで、純愛ストーリーになっている。
後半に訪れる展開は、一見破天荒で、前半の流れとはまったく違うように見えるかもしれないけれど、実際に問題になっているところは自己と相手への認識と理解、そして受容という点で、一切ぶれてはいないように思う。

なんのことはない。自分はこうした、理屈っぽさと感情のバランスが取れながら、優しさと愛情の込められた話が物凄く好みだと、まあそういうことなんだろう。

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