ガンパレード・マーチ山口防衛戦 2 (2) (電撃文庫 J 17-16)

【ガンパレード・マーチ 山口防衛戦 2】
 榊涼介/きむらじゅんこ 電撃ゲーム文庫



自然休戦期にも関わらず活動を開始、九州から本州山口へと侵攻を開始した幻獣軍。これに対抗するべき自衛軍は虚を突かれ大混乱に。宇部戦線は崩壊。新たに西部方面軍司令官に就任した芝村少将は全軍に岩国最終防衛ラインへの撤退を指示。山陽方面は撤退が続き、萩戦線は膠着状態に。
そして、中央から帰還した善行大佐が、撤退してくる部隊を掻き集め、伝説の人型戦車小隊5121小隊、戦車大隊、歩兵中隊を中核に、善行戦闘団を形成、進軍してくる幻獣軍へと相対する!!

もはや完璧に仮想戦記。だけど、これほどのレベルで陸戦を描いている仮想戦記は、ちょっと私の記憶にはありません。毎回同じようなこと言ってるかもしれないですけど、凄いわーー。
しかも、ぶっちゃけこれは、戦争の、地上戦のことなんか全然わかりません、って人でも充分楽しめる話に仕上がってるように私は思うんです。知識なんてなくても分かるように書かれてる、これすごいことですよ、うん。しかも、みんなキャラ立ってるしねえ。合田少尉や矢吹少佐なんて、地味なのに凄い味出てきたしなあ。
特に矢吹少佐。会議でのあざやかかつ苛烈な話術はまさに独壇場で、もう鼻血でそうでした。惚れますよ、ありゃあ。上司にしても部下にしても同僚にしても最高の人材だわ。

しかし、状況は完璧に敗色濃厚な末期戦の様相なんですよねえ。もう部隊の体をなしていない敗残兵の集団が、もう自然に作中の至るところに表われてるんだから。
軍閥の派閥争いに、現場、司令部問わずの足の引っ張り合い。実戦を経験していない精兵の脆さと、頭の中でしか戦争をした事のないエリート指揮官の不出来さ。
これまで単独で戦ってきた5121小隊にとっての初の他の部隊との連携作戦における、成功と失敗。
瀬戸口に代わり小隊司令に就任した芝村舞の苦悩と、部隊内の軋轢。

九州戦線を戦い抜き、もはや伝説とまで言われる戦歴をあげた5121小隊なのだけれど、だからといって無敵でもないし部隊内の問題は決してなくならない。
パイロットたちのコンディションの変調。司令という立場へのプレッシャーに苦しむ舞。善行とも瀬戸口とも違う芝村舞という指揮官のスタイルに戸惑いを隠せない小隊各員。
ただ、初めの頃の方ほど危うさも、一瞬後には破滅しそうな綱渡りな感じがあまりしないのは、九州からここまで一緒に戦ってきた仲間同士という信頼が、絆が、お互いの間に築かれているからだろう。だから、一番根底のところでは、疑念も不信も抱かない。
壬生屋と舞は、衝突しても険悪になる前に和解できるし、口さがない新井木だって、自分の間違いをすぐに認めることが出来るようになっている。瀬戸口や原さんのように巧妙にフォローを入れてくれる人もちゃんといる。問題がつまらないことで悪化しないように、場を均してくれる連中もいるし、以前は自分の事で精一杯だったやつらも、どいつもこいつもちゃんと相手の事を考えることが出来るようになっている。
今の5121小隊は、一つのチームとしてあらゆる意味において本当に強くなってきている。そして、さらに孤立した部隊としてではない人類軍という大きな組織の枠組みの中でも重要なピースとして機能しようとしている、そのはじまりの段階をこの巻で登り始めたんじゃないだろうか。
それを実感させる巻だった。

ちゃんと、最前線に出るパイロットが司令になることの弊害や問題についても書いてるあたり、感心しきり。
いや、これほんまに面白いわ。
素晴らしいのは、続刊が早々に来月に出るということ。素晴らしい素晴らしい。ありがとうございます。