狼と香辛料 5 (5) (電撃文庫 は 8-5)

【狼と香辛料 后曄〇拜凖犧宗進諺匳宗‥天睚幻


ロレンスは、イイ男になったなあ。本当に、イイ男になったなあ(感涙

恋人同士とも違う、長年連れ添った夫婦とも違う、一心同体の相棒ともまた少し違う、この二人の関係はいったいなんなんだろう。
いや、この二人の関係を指し示す単語なんてどうでもいいこと。ただただ、ホロとロレンスのお互いに対する絶対的な信頼感の大きさに圧倒される。
最初の頃のロレンスは、ホロの一挙手一投足に振り回され、やり込められていた感があったけど、段々とホロの手口に慣れていって、この巻ではもう完全に対等に丁々発止を繰り広げていたように見えました。
まだロレンスは主導権はホロが握ってると思い込んでいるようだけど、今となっては読んでるこっちの眼からすると、お互いがお互いの手綱を握り合ってるように見えます。
ホロの台詞にもあるんだけど、ロレンスはいい意味でホロに対して気を遣わなったよね。とてもリラックスしてホロの側にいる。かといって無遠慮になるでなく、大切な人の心の状態を常に気に留めているその優しい気遣いは決して失われること無くロレンスの中に息づいているわけで、そりゃあホロもメロメロになるわなあ。ロレンスのやつ、恥ずかしがりながらも、段々とホロが掛け替えのない存在であることを彼女自身に伝えることに躊躇いがなくなってきてるし。

なんだかもう、二人の掛け合い、『ごちそうさま』レベルに至ってしまって……ごちそうさまです。
もう、駆け引きの会話の中にある種の相手の気持ちへの試し、という要素も薄れて、ただひたすらにお互いの反応を見るのが楽しくて仕方が無い、という幸せの絶頂のような空気に、いささか酩酊しそうなほど。

でも、だからこそホロは怖くなってしまったんでしょうね。この恐怖感は、きっとロレンスを気に入った最初の時点から抱いていたものだったはず。二人の心の距離が縮まるに連れて、この恐怖感は募っていったのでしょうけど。
うん、これまでの4巻までのホロとロレンスの関係だって、充分刺激的で優しくてお互いの存在をかけがえなく感じているのがひしひしと伝わるようなものだったんだけど、この5巻での二人の楽しそうな距離感は、そんな今までの二人の関係ですら置いてけぼりにしてしまうような近しいもので。だから、なんだかホロの恐れが凄く納得できる形で伝わってきた感じがしました。
本当に、今が頂点じゃないかと錯覚してしまいそうなほど、いい感じだったもんなあ。なんかもう、普通に手とか繋いでるしさ。


だからこそ、最後のロレンスが光り輝くわけです。
己が抱える商売人としての業。怯える想い人の心の凍え。それらすべてを飲み下し、懐の内に抱き寄せる力強さと優しさ。
こんなイイ男、何百年生きてたってたった一人巡り逢うか逢わないかでしょう。ホロが今までどれだけ恋物語を綴ってきたかは、結局彼女の口からは語られなかったわけですが、間違いなく最高の物語に出逢えたと思っているはずです。
商売人としても一皮向け、人間としても大きくなり、何より一人の女の子の手を握ってくれる男として最高の意気を見せてくれたんだから、そりゃあ、豊穣の女神様だってメロメロに惚れるわな。

今までロレンスが一度として口にしなかったあの言葉を、あの場面で聞けただけで多幸感に溺れ死にそうな【狼と香辛料】の最新刊でありました。