ガンパレード・マーチ山口防衛戦 3 (3) (電撃文庫 J 17-17)

【ガンパレード・マーチ 山口防衛戦 3】 榊涼介/きむらじゅんこ 電撃G文庫



ちょっと待て。じゃあ、この山口防衛戦というタイトル自体がミスリードじゃないですか!?

前の巻あたりでか。善行本人と原素子が善行司令は後方の参謀本部こそが似合いの場所で、最前線の戦術司令官としてはあまり有能ではない、とからかい&自嘲混じりに口にしていたわけですが、この3巻を読む限りこりゃあ冗談抜きにセンス無いのかもしれないんですね。なまじ、組織編制、運用能力が神レベルに高いからなあ。
というわけで、5121小隊を中核とした諸兵科連合、善行戦闘団は敗走してくる自衛軍を吸収しつつ、山口地区の防衛戦で眼の覚めるような戦果をあげていたのだが、本土に上陸した幻獣軍は萩戦線が崩壊すると同時に一斉にあらゆる交通網を使って広島は岩国最終防衛線への攻勢を開始する。
いつの間にか、現在の戦闘区域における人類軍の最大戦力である善行戦闘団は山口に囮となった幻獣軍に釘付けにされ、天王山となる戦場から取り残され遊兵と化す羽目に。
これ、地味にかなり致命的な失策じゃないですか?
ここで天才・荒波司令がこれまでのセオリーを無視して独自の対幻獣軍戦術に基づいて構築した岩国要塞が見事に機能したからいいものの、例えば熊本城決戦のようなこれまでの人類軍のセオリーに基づいた戦い方をしていたら、岩国の陥落はすぐだったはず。岩国の頑強さを除けば、幻獣軍は完全に西日本の人類軍を手玉に取ったわけですから。
逆に言えば、それだけ岩国要塞の不屈振りが輝くわけですが。それまでほぼ完璧に侵攻していた幻獣軍の作戦を頓挫させ、人類を絶滅の際から救ったのは伝説の英雄5121小隊ではなく、天才荒波司令と、岩国要塞に篭もった名も無き兵士たち!

ということで、山口防衛戦になってからなぜタイトルから5121小隊の言葉を外したのか。その意図が嫌というほど伝わってくる山口防衛戦第三弾。
今回の主役は岩国絶対防衛線を守る人々。とうとう彦島分遣隊の合田少尉や紅陵女子α戦車小隊の二号車車長の橘翔子百翔長にまで立ち絵が。
いや、だから明らかにオーケストラシリーズのメンバーより、この榊ガンパレのオリジナルキャラのデザインの方が気合入ってるように見えるんですけど!!
合田少尉は、本格的にキャラ立ってきたなあ。元高校野球選手なんて、戦争モノじゃもはや超反則級の過去設定じゃないですか。しかも、しっかり手榴弾の、しかも工兵用爆薬の信じられない遠投距離で肩の強さを見せ付けてくれますし。
超人的な能力を誇る5121小隊の面々とは違い、紅陵女子α戦車小隊や彦島分遣隊、旧荒波小隊の土木一号・二号の連中は、普通の連中に過ぎない。勿論、過酷な戦場を生き抜き、修羅場を潜り抜けた彼らはたたき上げの歴戦の兵士である。その経験や培った感覚を駆使し、岩国司令部が用意した対幻獣軍用の市街戦戦術や設備をフル活用して、押し寄せる幻獣軍の大軍の猛攻に耐え忍ぶわけですが。
5121小隊の面子と違って、こっちの連中はふとした流れ弾で死んでもおかしくないような気がして、読んでる間中ハラハラしっぱなし。
実際、戦死者が出るわけで。その後も、際どい場面が続いて続いて、どいつもこいつも榊ガンパレの始めの方から元気に生き残ってた連中だから、5121小隊の面子と同じくらい好きになってしまってる連中だから、もう心臓が痛くて痛くて。神崎ぃ、頼むよぉ。まじビビッたから(半泣
唐突にポツンと挟まれる、佐藤ちゃんの遺書を妹が見つけて読むエピソード。もう反則だから、そういうの。泣くよ。
ほんとに、死なないでくださいよ、佐藤ちゃん。

しかし、岩国要塞の戦いっぷりは、まさに陸上の硫黄島。縦横無尽に巡らされた地下通路を駆使した、粘り強い執念の戦場。
岩国市街は廃墟と化し、地上にもはや人間の姿はなく、幻獣たちは岩国の地を征服したよう見えるにも関わらず、雲霞のごとき小型幻獣群は、地下通路に誘い込まれて纏めて叩き潰され、中型、大型幻獣たちはどこからともなく飛んで来る砲弾やミサイルによって次々に撃破されていく。
華やかでも派手でもない、だが人間の執念が結晶化したような岩国絶対防衛戦。ある意味、今まで見たガンパレードの戦場の中でも最も幻獣を圧倒するような戦い振り。
実際は、戦力を湯水のように消耗し、徐々に戦線を押し込まれていっているのだけれど、これまでの双方に信じがたい被害が出る真正面からのノーガードの殴り合いと違い、幻獣の長所を殺し、人間側の被害を極力抑えるその総軍ゲリラ戦のような戦いは、これまでとはまた種類の違う興奮を、読んでて掻きたてられました。

人間、舐めるな!!

英雄でも怪物でも伝説でもない兵士たちが、5121小隊抜きで圧倒的な幻獣軍と互角以上に渡り合う。5121小隊の暴れっぷりも大好きだけど、やっぱりこういうのも素晴らしく好きですわ。

そして、岩国要塞でせき止められた幻獣軍の背後から、山口から反転してきた諸兵科連合戦術の実戦経験を山ほど積んだ善行戦闘団が迫り来る。
災禍を狩る災禍、来たれり!!

だが対する幻獣側も、これまで温存してきた切り札をここで切る。

…………って、帯、今気付いたけど盛大にネタバレしてるじゃないですか!? 帯、読み終わるまでまったく見てなかったから気付かなかったけど。
いいのか!?

いやー、しかしやっぱり期待に違わず最高に面白かった榊ガンパレ。ここに来て、さらに傑作度が右肩上がり急上昇してます。
もちろん、今回だって5121小隊の面々はいたるところで大騒ぎ。存在感は損なわれておりません。というか、出番多いわけじゃないのに存在感ありすぎ。ラブコメ禁止(笑
特に遠坂の坊ちゃん、八面六臂に活躍しすぎ。どれだけ出張整備の神様やってるんですか(笑
そういえば、なんとなく、新井木が段々とニーギらしい性格に近づいてきたかな。狩屋といい、壬生屋といい、なんか高いところで安定したし、みんな、いい感じで完成形に近づいているのかも。舞も、指揮官という立場に押し潰されそうなところ、なんとか峠越したっぽいし。
逆に一番危なっかしくなってるのがあっちゃん、というのが面白いところかも。石津もリミッター外れてるみたいなところもあるし。はてさて。
ああもう、とんでもないところで終わられて、たまらんですよ、実際!!
来月出ませんかね?(もう出ません