神曲奏界ポリフォニカ ぱれっと 神曲奏界ポリフォニカ シリーズ短編集 (GA文庫)

【神曲奏界ポリフォニカ ぱれっと】
  浅井ラボ/あざの耕平/神野オキナ/三田誠
  山本ヤマト/okama/凪良/狐印/椋本夏夜



 うはーーー、堪能した♪

 現在、ライトノベル業界の最前線でバリバリ書いてる作家四人(ラボさんはバリバリかは微妙か)の豪華メンバーによる神曲奏界ポリフォニカのシェアワールドノベライズ。
 どれも期待に違わぬ出来で……堪能した〜〜♪


<たとえ時が経とうとも(As Time Goes By)>
【レンタルマギカ】を始めとする多くの作品を手掛けてる三田誠さんの短編。この人だけ既存のポリフォニカの登場人物で話を書いてらっしゃるんですよね。
ポリ赤のレンバルトって、何気にポリ赤の主人公であるフォロンより人気ありそうなんだけど、どうなんでしょ。少なくとも、私はウェットにとみながら、同時に心に乾きを宿してるレンバルトの方が好きなんですよね。
今回の話は、そのレンバルトの乾きに焦点を当てた、どこか訥々として渋味のある堅実なお話。三田さんは、ここ何年かでこうした淡々とした文章の雰囲気の中にしっとりとした味わいが混じるようになりましたねえ。昔はもっとただ堅いだけの風味だったのに。
場末の酒場で出会った一人の老人とのセッションを通じて、自分の音楽と新曲への姿勢に何かとっかかりのようなものを見つけていくお話。求めるものを得ることは、この自分と同じ往徨の中にいた老人のように最後まで訪れることはないのだろうけど、それでも先の見えない人生の道筋に一つの明かりを見出すような、切なくも淡くしっとりとしたいいお話でした。


<音色は遠く、耳に届かず>
浅井ラボさんは、相変わらずの浅井ラボだったというお話。徹底的に突き放すだけならまだ楽なのに、最後の最後の一線にどうしても捨てきれない心のカケラを残さずにはいられないそのあまりに苦い未練がましさと残酷さが、やっぱり浅井ラボなんだなあ、と噛み締めるばかり。
だいたいからして、最後の一線を明らかに越えてしまっているにも関わらず、河原で弾く男の曲へ、あんな少年の言葉を送らせるという時点で、誰が一番酷いかと言うと、主人公の暗殺者でもその雇い主でもなく、作者である浅井ラボさんなんだよなあ。
まあ、それが浅井ラボのイイところなんですけど。


<ワイルドウェスト・いえろー>
神野オキナさんの短編は、この人のオリジナル作品である【あそびにいくヨ】のキャラが出るってんで、ちょっと構えて読んだんだけど。
いやいや、これがなかなか。
へいほんや六が出るっていうから、てっきり緩いふにゃふにゃした話になるのかと思ってましたけど、アントニオが浮つかずにどっしりと脇座に座り込んでくれたお陰で、ちゃんとポリフォニカの住人であるブックスを主体とする、あの低温サイドの神野オキナの筆調の話になってましたよ。
最近多く書くようになった緩い神野オキナもそれはそれでいいんですけど、昔からの淡々として必要以上に温度があがらない神野オキナの作風が好きだった身としては、今回の過去に契約者を亡くし二十年近くも一人で西部辺境の治安を守ってきた男を主人公とした、束の間の来訪者である少女との淡々とした交流、という話の筋は自分で思っていた以上に好みだったようで。
あっさりとした別れにも、確かに一会を経た男の僅かな心境の変化が垣間見えて、良かったです。
こっち側の世界とポリフォニカ世界との交錯については、長編であるホワイトでがっつりと示されてるんで、読む前に考えてたより違和感とかはあんまりなかったなあ。


<ダン・サリエルと白銀の虎>

読め! 話はそれからだ!

すみません。あざの信者ですみません。でもだって仕方ないじゃないですか。
こんなにこんなにこんなに、もうなんだよこんちくしょう! と喚きたくなるくらい面白いんですから仕方ないじゃないですか。
サリエリ最高! もうあんた素晴らしいよ!!
こんな小者で大物で、天才で俗物で、卑小で器のでっかい男は見たことないっす。
サリエリとモモ、アマディアとコジというデコボコ四人組の話、これで終わりというにはあまりに勿体無い、勿体無すぎて涙が出そう。
ポリ銀、やりましょうよ、ほんとに。



三田さんの短編以外は、世界観が共通しているというだけでオリジナルなので、これまでポリフォニカシリーズを読んでない人でも手を取れるつくりかと。三田さんの作品も、ポリ赤読んでなくたって充分楽しめる丁寧なつくりになってるし、これを入門書にまず手をとってみるのも良いかもしれません。
いやー、まじでポリ銀、みたいなあ。読みたいなあ。
ポリ黒で示唆されたような気のするポリ金と合わせて、新シリーズではじまらんもんかなあ……マジで。