カミングアウト!

【カミングアウト!】 高殿円


【パルメニア】シリーズや【銃姫】の高殿円さんの現代劇。そういえばこの人が現代の話を書くのは初めてかしら。といってもこの本は一般文芸っぽいのでライトノベルの系統からは少し外れている気がするけど。
しかし、この人はさりげなくて気がつきにくいんだけど、作品のジャンルによって書き方変えてるっぽいんですよね。どれを読んでも高殿円の作品にも関わらず、少女系レーベルから出てるパルメニアシリーズと、少年系からの銃姫とじゃ筆致の立地点がそれぞれに合わせて変わってきてる。これを意識してやってるならすごく器用だと思うし、無意識ならセンスがずば抜けてるってことなのか。
というわけで、この【カミングアウト!】は一般文芸という立ち位置から、これまでとはかなりまた違った書き方になっている。
だけど、やっぱりどうしようもなく高殿円! な作品で。

すっごく面白かったーー!

買ってから長らく部屋の魔窟の中に沈んでて、先日部屋をひっくり返した際に湧き出てきたものだから、これを逃せばまた読む機会が遠ざかるとばかりに、仕事場に持って行って昼休みなんかに暇を見て読んでたんだけど。

面白かったー!

初っ端から、援助交際にどっぷり浸かった女子高生が主人公の話が来て、内容もドロドロとして、こりゃあ鬱々とした話になるのかなあというのが第一印象。その後も、29歳というがけっぷちの年齢の上に、人様にはあまり知られたくない秘密の趣味を持ったOLの話とか、セックスレスに悩む専業主婦とかの話がきて、読んでるこっちの気分も重くなってきたところで、
最初の女子高生の話と直接つながる、婚期を逃し、孤独を噛みしめる独身男性の話に及んだところで、「おっ!?」と思わせる風向きの変化が。
そして、横暴な夫に三行半を突き付けるべく十年の長きにわたって準備をしてきた老夫人の話に至ったところで明確に話の雰囲気が激変。
ここから一気に、それぞれの話が収束。
社会的な常識、しがらみや固定観念に囚われ、縛られ、雁字搦めになっていた彼ら登場人物たちが、自分たちを不安や焦りに陥れていたもの、縛り付けていたものの正体に気づいたとき、内なる衝動に突き動かされるように、それまでため込んできたものを爆発させる。

カミングアウト! なるほど、こりゃあ素晴らしいタイトルだ。
もう読んでてスカッとした。痛快にして爽快!!
前半のストレスを溜める構成からの、一気の解放。読み終わったあとの清涼感。あれだけ重々しい曇り空だったような雰囲気が、隅々まで青く晴れ渡ったような青空のごとき結末に。
これぞまさしくハッピーエンド。それは単なる開き直りだったり勘違いだったりするのかもしれないけど、でも思いきり、正面から向き合い立ち向かうことはきっと大切なことなんでしょうねえ。
これに出てきた現代に生きる主人公たちに幸有らんことを。

個人的には、「骨が水になるとき」の主人公。サラリーマンの臣司が一番好き。すみません、私も男なんで、無性に…ね?(笑
まさか幸実との話が彼の話とつながることでこういう形になるとは、予想もしてなかったんで。ああいうエンド、大好きなんですよ、ええ。