ウィザーズ・ブレイン (6〔下〕) (電撃文庫 (1500))

【ウィザーズ・ブレイン VI 再会の天地 〈下〉】 三枝零一/純珪一 電撃文庫


各巻主人公の違う群像劇スタイルではじまったこのウィザーズ・ブレインだけど、今回で最終的な主軸となる人物は選び出されたみたいですね。
各々がそれぞれの信念を得て、決意を固め、自分の貫くべき想いを胸に宿し戦う中で、まだ彼一人だけが決断をしてない。
だが、それが優柔不断の結果だというのは間違いだ。他人に自分の生き方を任せてしまっているのとも少し違う。
人類の行く末が既にタイムリミットに入っているという事実を前に、マザーコアの正体と真実を前に、魔法士が、人間が、人らしく生きられる世界という最終的には同じ未来を目指しながら、願いながら、そこに至るために選んだ道筋が違ったがために争うことになる人々の姿を、そしてなによりアニルという偉大な男の生き様を目の当たりにし、彼はあえて強い決意を持って己の進むべき道をまだ決しないことを選択する。
道を選ぶということは、すなわち方向性を定めてしまうということにもつながる。
未だ世界を救う方法が見当たらないこの絶望に包まれた世界の中で、彼の強い意志に基づいた選択の先送りは、きっと可能性へとつながっている。
そして彼が決断を下すとき、彼の選択はきっと道をたがえた皆の進む先を一つにまとめることになるに違いない。
ヒントはすでにちりばめられている。
おそらく、真昼はその解答に気づいているんだろう。賢人会議の参謀となりながら、彼のやっていることは賢人会議の目的の範疇から明らかに逸脱している。真昼の視線は、はるか遠方にあるようだ。

言うなれば、次の巻からこそがこの【ウィザーズ・ブレイン】という作品の本番だ。この巻までは、舞台設置の下準備にすぎない。
実に丹念で、偏執的なまでに着々と、途方もない密度と規模で組み上げられた舞台装置だとも言えるけれど。
考えてみるといい。想像してみるといい。これほどの【ウィザーズ・ブレイン】これまで出版された話数は6。
端的に行っても傑作ぞろいだ。
だが、その傑作六編ですら、これからはじまる最後のエピソードへの下拵えでしかないというのだから、これからはじまるこの物語のクライマックスがいったいどういう次元へと至ってしまうのか。
想像するだけで身震いしてきてしまう。

あとはボタン一つで埋設された爆薬が一気に爆発するのを待つばかり。
……待つばかり。
で。次、出るの何年先ですか?


困はじまってから、予想はしてたけどカップリングがえらいことになってるなあ。クレアとヘイズもそうだけど、イルと月夜のコンビもお気に入り。彼女が最後にあそこに入ることを決めたのって、真昼のことのためだけじゃあないよなあ。どれほどの割合かわからないけど、イルの存在は影響してるはず。
クレアも、最初の登場時からイメージが大幅に変わりましたねえ。なんかこう、最初は自信なさげな儚げな印象だったのに。彼女もまた、想いを吹っ切り、自分の進むべき道を見出したからこそ自らを変えられた、このウィザブレの主人公の一人になったわけだ。
これで一気にヒロイン衆の人気のトップ争いに食い込んだんでない?(笑