火の国、風の国物語―戦竜在野 (富士見ファンタジア文庫 182-1)

【火の国、風の国物語 戦竜在野】 師走トオル/光崎瑠衣 富士見ファンタジア文庫



富士ミスの【タクティカル・ジャッジメント】シリーズの師走トオルが新たに送り出す正統派ファンタジー。
って、実はタクジャって私、初期に何冊か読んでるだけでシリーズは買ってないんですよね。基本的に作者買いのわたくし。逆に言うと、いったん離れてしまうとなかなか再びその作者の本を買う機会がない、ということにもなります。
でも、しばらく遠ざかっているうちに、こっちの趣味趣向が年月によって変わるのか、作者が上手くなるのか、新しいシリーズが作者の筆致に合っているのか、偶に劇的に面白くなってるときがあるんですよね。
というわけで、最近はインスピレーションに従って、購入リストから外している作家の作品にも手を伸ばすようにしています。
これも、ティンときた! というほどじゃないんですけど、デビューからずっと同じシリーズを続けてきた作者の、新しいシリーズ。しかも、これまでの裁判モノから一転してのどうやら正統派らしい直球ファンタジー作品らしい、ということで、手を出してみることにしたのですが……。

ストライィィィィィック!!

直球かと思って待ち構えていたら、豪速球が来ましたよ!
わりとありふれているようで、実はライトノベル界隈ではあんまり数がない英雄戦記モノ。
主人公は多少頭に血が昇りやすいものの、心身ともにどっしりと腰の据わった騎士らしい騎士。それでいて、若者らしい初々しさも兼ね備えてて、読んでても気持のいい爽快なまさに英雄の器ともいうべき王道主人公。
基本的に最強主人公なんだけど、そういうのを感じさせないんですよね。たとえば、アルスラーン戦記のダリューンは、尋常ならざる最強っぷりだけど、それはまあダシューンだし、で片付けてしまえます。それに似た感じの、そうですね、最強であるのに相応しいキャラクターというべきか。
堅物で昔気質、姫様に良いようにこき使われる苦労症、という若いのに古風な気性も、好感度高いです。
それでいて、戦闘時の凄味を感じさせる描写、表現はなかなかのもの。線上の中で敵味方を問わず、視線を引き付けるような英傑の気風。
たまに見かけるあまりに軽いなんちゃって中世じゃなく、それなりにちゃんとした戦記モノを展開できるように練り上げられた封建制の世界観という土台もあって、なかなか期待できそうな戦記モノが楽しめそうです。
少なくとも、読み終わってワクワクドキドキが止まらない程度には。

ヒロインも、高飛車で主人公アレスを顎でこき使いながら、王族としての義務と役割を幼い頃から身につけ、その理想を実践しようと常に努力している年下のお姫様クラウディア。
最後の戦闘終了後の野戦病院で、それまでの地味っぽさを脱ぎ捨ててキャラ立ち覚醒してみせた、従軍神官にして義妹のエレナ。
そして、黄昏の王と呼ばれる謎の存在に仕え、アレスに助言を与えながら彼を殺戮の血と戦乱の中に導こうとしている精霊パンドラ。
と、イイキャラが、それぞれ三方かち合わないところに配置されてて、妙ですw
あとは、ドワーフの従者ガルムスは、まあ別としても、アレスの副官となる女垂らしのローラン、そして一度アレスにコテンパンに敗北してから紆余曲折の道を歩んでしまってる少年騎士レオン。この二人の脇がどう輝いてくるかが、けっこう楽しみ。

どうやら、この物語、敵側視点から描かれている話も雑誌の方で展開されているらしいので、思っているよりもでっかい話になりそうな予感。
うふふ、望むところでございます。
この手のファンタジー戦記ものって、ほんとあんまりないから、期待は膨らむ一方なのですよ。