踊る世界、イヴの調律 (富士見ファンタジア文庫 174-4 黄昏色の詠使い 4)

【黄昏色の詠使い 4.踊る世界、イヴの調律】 細音啓/竹岡美穂 富士見ファンタジア文庫


重ね重ね、この作品のイラストレイターに竹岡美穂さんを選んだのは慧眼と言いたくなる。
この作品のあったかい透明感に、これほどふさわしい絵柄は、今となってはちょっと他に想像できないですよ。

原因不明の昏睡状態に陥ったクルーエル。そのころ、世界のはずれの孤島で、クルーエルに似た少女に出会うカインツ。
クルーエルを中心に、ネイトの夜色名詠とそれに連なるもう一つの名詠式、さらに彼らを取り巻くさまざまな真相が明らかになっていくんだけど……。
こうなると、【黄昏色の詠使い】というタイトルが気になってくる。この黄昏色の詠使い、とはいったい誰をさし示しているのか。
一巻を読んだ時は漫然と、夜色名詠を使うネイトかと思ってたんだけど。夜は夜でも、ネイトの名前が意味しているのは「夜明け」。夜へと至る境目の時間をいう黄昏とは、真逆を意味している。
あれ? そういえば、クルーエルを守護している赤の真精は「黎明の神鳥」なんですよね。……ふぅん(思索中)

そもそも、黄昏色という名詠が、夜色名詠のことかどうかもはっきりしない。現状確認されている名詠式は五色に加えて、五色の混合である虹色。白の派生とされる灰色。そしてイブマリーの夜色と、新たにその存在が示されたもの。
でも、そのいずれとも、黄昏色はそぐわない。このタイトルにはどういう意味が込められているのか。次の巻で話は一つ区切りを迎えるみたいだけど、タイトルについてはまだ先に持ち越されるかもしれないなあ。

前作の感想では、ネイトはまだ自分に課せられた道を進むのにいっぱいいっぱいで、本当の意味で周りを、強いては自分を支えてくれているクルーエルを見ていない、と書いたけど。
その辺は、この巻で解消されたのかもね。
ネイトが他に扱う者のない夜色名詠式を研鑽しようとしているのは、今は亡き母イブマリーの背中を追いかけるため、という意味合いが大きかったのだけれど、自分を支えてくれていたクルーエルが倒れ、その背に大きな運命が背負わされていることを知ったとき、自分が彼女のために何ができるのかを考え始めている。そして、自分だけが使える夜色名詠。それを学び、研鑽し、母が残したこの謎の名詠式の秘密を見つけようとする意味を、改めて考え始めている。
がんばる男の子のスタイルを変えることなく、でもその方向性を新たな進路へ切り返したネイト君。
ここでも、一つの巣立ちが垣間見えたなあ。
がんばれ、男の子。

それにしても、まだ男女の機微どころか恋愛のなんたるかも理解していないおこちゃまのネイト君に、きっぱりと告白してさっくりと決断を迫るクルーエル嬢は、ある意味鬼畜外道のたぐいです。お、恐ろしいヒト(汗
いや、しかしお姉さんキャラがついつい保護者としての立場に齧りついて時期を逸してしまうことが多い中、彼女の自分の気持ちにとても素直で変に立場に拘泥しないきっぱりとした態度は、とても清々しいです。
おおいにもっとやれ。

あと、ジジイども。そのライバルの叱咤に限界を超えて立ち上がるとかいう熱いノリは若者の特権だからして、自重しろ(笑