理由あって冬に出る (創元推理文庫 M に 1-1)

【理由あって冬に出る】 似鳥鶏 創元推理文庫


え? ちょっと待ってくださいよ。文芸部の伊神先輩は男でしょ? 女じゃないでしょ? 某シーンで、自分は父親にならないって言ってるんだから。
というわけで、表紙のメガネっこは柳瀬先輩に違いない。そう思いたい。

評判にたがわず、というか予想していたよりも遥かに面白かった。噂の幽霊の真偽を確かめるために深夜の学校に忍び込んだ学生たちが、実際に幽霊を目撃してしまったことから始まる学園青春ミステリー。
放課後探偵団、なんて言い回しをしてるけど、これっていわゆるいつもつるんでる仲間内で探偵団を結成するんじゃないのが、ひそかに特徴的じゃないかしら。
現場となる芸術棟に部室を据えている美術部、文芸部、吹奏楽部とか、知人だったり友達だったりはするけれど、いつも一緒にいる仲間どおしが組んで謎に挑む、という感じではなく、興味本位から巻き込まれ、必要にかられて、と言った感じでバラバラっと雑多に集まった、という感じがしてなんか不思議な探偵団……いや、そもそもグループは結成していないのか。なんかこう、流動的なんですよね、すごく。事件の展開も流動的だし。事件も一回だけじゃないし、事件の発生とトリックの解決が同時進行的に連続して、最後にドカン、も一つドカン、と見せかけてドカン! みたいな?

とにもかくにも、キャラがみんな強烈で個性的。確かに、これはライトノベルっぽい。表紙もそうだし。
まあなにより探偵役の文芸部部長伊神先輩の人の話はきかねーは、周りの目はきにしねーわのオンマイウェイっぷりは強烈でした。ファミレスでの横暴っぷりは吹いた(笑
翻って、女の子もみんな魅力的で。吹奏楽部のちっこい部長高島先輩しかり、出演はちょびっとにも関わらず強烈な印象を残してくれた邦楽部の二人組しかり。しかし、一番はやっぱり演劇部のトリックスター柳瀬先輩でしょう。
思いっきり好き好き光線を発射しまくりながら、それでいて押し付けがましくなく、ウェットに富んだ会話で主人公の葉山くんにメンタル面での負担を一切押しつけてないんですよね。
二日目の幽霊事件の際なんか、数時間待ってるんですから。しかも、するっとその事実をカバーして、葉山くんに気づかせてないんですから。彼が鈍感というのもありますけど、心配りが素晴らしい。
それにしても、冗談か本気かわからない好意、とは一線を画してるでしょう。ベタ惚れじゃん。葉山くんは先輩の心配りに甘えすぎです。いくら相手が冗談めかしてるからって、もうちょっとしっかり対応しないといくらなんでも柳瀬さんが可哀想ですよぅ。

とかく、こう、放課後の部活の喧噪がぎゅっと積みこまれたような楽しさが伝わってきます。こうした賑やかで、学生たちが活き活きとしてる色鮮やかな雰囲気は、学園ものの本分ですよね。
いやいや、これは面白かった。お勧め。
はたしてあるかどうかは定かではなく、たぶんなさそうだけど、同じキャラクターたちで続編読みたいなあ。