断章のグリム 6 (6) (電撃文庫 こ 6-19)

【断章のグリム 6.赤ずきん(下)】 甲田学人/三日月かける 電撃文庫


これは素晴らしかった。童話・赤ずきんを模した<泡禍>。その度肝を抜く配役と見立ての意味、事件の真相。
自分の中でシリーズ随一の傑作と思っている二作目【ヘンゼルとグレーテル】の魔女のお婆さんとグレーテルの往還に匹敵する精妙な解釈と真相だったと思います。
赤ずきんと怪談の類似性なんて、こういう形で指摘されなければ全然思いもしなかっただろうし。どこまで正確に突っ込んでるかはわからないんですけど、ホラーや謎解きミステリーとしての側面とはまた別に、童話に含まれた、もしくは忍ばせてある意味や背景などを色々と解釈・解体し、再構成していく童話研究的な側面がまた、とても面白いんですよね、この作品。第一級のホラー描写に震えあがり、予期せぬ事件の展開や真相に仰天しながら、同時に「ほー」やら「はー」やら「へぇ」やら主題となっている童話に秘められた意味や新鮮な視点、解釈に感嘆の吐息を洩らしながら読み進める。一粒で三種美味しいって感じですよ。
その上、雪乃さんが「殺すわよ」って殺伐とツンツンしてくれているというヒロイン強度も一級品という……なんということだ、まるで隙がないじゃないか!

それにしても、この作者の話読んでると、そんじょそこらの物語に出てくる狂人がまったく温く感じられてしまって、非常に困る。
これに出てくる狂人は本気で、ヤバいもんなあ(汗
他の作品なら飛び抜けて危ない人のはずの笑美さんですら、最後まで読むと明らかに前座でしかないし(w


もしそうなら―――※※※※は既に完全に狂っています。


この文字列を見た瞬間、ゾワゾワっときて「うわっやべえッ」と感じましたもんね。
そんでもって、白日の下にさらされる真相。今回は、かなりキました。

気になるのは<最後の赤ずきん>ですよね、やっぱり。この人物はまとも過ぎたんでしょうね。周りを見渡しても、主人公の蒼衣を含めて誰も彼もがどこかが致命的にイカレてしまってる人ばかり。唯一例外は雪乃なんだと、私は思ってるんですけど、彼女は彼女でガチガチに決意で心を鎧ってしまってますからね。
結局一番マシな健全性を保ってる人物が、一番最悪の顛末を選んでしまうあたりが、この作品世界の救いの無い残虐さを示してるんでしょうけれど。
これで、こいつも精神を病んじゃったのかなあ。
再登場しても、さらなる最悪を伴ってくるとしか思えなくて、怖いです、怖い。