魔女よ蜜なき天火に眠れ (富士見ミステリー文庫 66-10 夜想譚グリモアリス 3)

【夜想譚グリモアリス 3.魔女よ蜜なき天火に眠れ】 海冬レイジ/松竜 富士見ミステリー文庫


Amazonの表紙画像、偶にこんな風にぼやけてるのがあるんですよね。見るからに拡大コピーです、みたいな感じの。
しばらく前までと違って、きっちりライトノベルの表紙を用意してくれるようになったのは助かるんですけど。
さて、今回はメインヒロインのアコニットが事情もあってある意味出番少なめ。とはいえ、直接前面に出て魅力を振りまくという方式ではなく、周辺から土台を補強していくことでキャラクターの魅力と深みを増していく、という形式にも見えるので特に不満もない。出てるときは、むしろ濃密にインパクトあるツンデレをかましていましたし。
P332のあれは、けっこう不意打ちでガツンとやられましたしねえ。よろしい、アコニットよ。汝こそ不器用と照れ隠しと無自覚が黄金律で配分された実に瀟洒なツンデレさんと認め崇めようではないか。
今回は、冥府でのアコニットの立場や現状を詳しく開示したことで、これまで現世で見せていた傲岸不遜で高慢我儘な異邦のお姫様という姿が彼女の一面でしかない、というのが伝わってきたし。
色々と重たいものを背負い、課せられた義務と責任を果たそうという意思と決意を持った誇り高い貴姫という顔を、あまり主人公に見せないのは、誓護がアコニットの置かれた立場というものを詳しく知らないのもあるんだろうけれど、彼女の我儘を彼が参ったなあと頭掻きながらもなんだかんだと全部聞いてくれてるからなんでしょうねえ。
けっこうアコニット、好き勝手やってますけど、他の人と違って誓護はアコニットの身分は一切関係なく、純粋にアコニットという女の子の我儘に付き合ってくれてる、というところがありますし。周囲の人間には恵まれているアコニットですけど、それでも冥府の人間にとってアコニットはアネモネの姫という視点は絶対に外せないものですしねえ。
なんだか、アコニットの誓護への甘え方が、段々と巻を重ねるごとに自分の高貴な血筋を盾にしたものから、一人の女の子としてのものにちょっとずつ変わっていってるようで、やたら可愛いんですよね。
出来れば、今回ももう少し祈祝と長く行動して欲しかったところですけど。二巻では、二人の絡みがやたらと微笑ましくて好きだったので。

それにしても、この主人公はイイ男ですねえ。自分じゃ、妹バカのシスコンの社会不適格者みたいな言い方してますけど。妹のためなら平気でどんなことでもしでかせる、とか豪語しているわりに、これまでのアコニットへの接し方といい、リヤナのように困っている人についつい手を差しだしてしまったりとか、完全にお人好し。自分じゃ気づいてないあたりが笑えるんですが。
アコニットにしても、今回のリヤナにしても、前回斬った張ったを繰り広げた軋軋にしても、自然と誓護に懐いたり、好いてしまったりなんだかんだと信頼してたりするのがとても納得いくんですよね。
イイ主人公です。素直に恰好イイと思う。肩ひじ張らない自然体の男前。

さりげなく、この作品の根幹にかかわるような伏線をさらりと放置したり、アコニットとアネモネ家を取り巻く冥府の麗王たちの思惑や策謀が浮き彫りになったり、アコニットの兄と思しき人物の登場したり、リヤナや鈴蘭というアコニットの直接的なライバルになりそうな人材が出揃ってきたりと、どうやら話のスケールも順当に大きくなってきたみたいで、とても続きが楽しみ。面白くなってきた。