ダークエルフの口づけ 4 (4) (富士見ファンタジア文庫 21-84 ソード・ワールド・ノベル)

【ダークエルフの口づけ 検曄\鄂傭虧澄芯婆祥ァ”抻慮ファンタジア文庫


これは非道い!(褒め言葉
ここまで人の生命や尊厳が虫けらみたいに扱われてる世界は見たことない。人間なんてものは、利用されて殺されるためだけに存在しているみたいな、凄まじいまでに価値が認められていない。
悪徳に塗れた都や世界は、他の作品にも少なからず見受けられる。【され竜】や【薔薇のマリア】。【ドラゴンキラーあります】なんかもそうか。これら、法や秩序が塵芥のようなもの、欲望だけが優先される、そんな悪や力が栄える街を舞台にした作品は、でもそんな中でも足掻きもがき諦めや絶望にとらわれながらも、どんな形だとしても人間らしく人が生きていた。
でも、この物語の舞台となる混沌の王国ファンドリアの闇の深さと来たら……。そんなささやかな人の願いや抗いを徹底的に無視し排斥したように、悪意と欲望、権謀術数が無力な人々、争いに敗れた人々を押し流していく。
善意は、温かい想いやりは、ささやかな願いは、利用されるためにあるものなのか。
なまじ、この泥沼の闇のような世界の中で、丁寧に切ない願いや優しさが描かれているから、それが容赦なく叩き潰され、吐きだめに捨てられる様が痛烈な無常観に苛まれる。
その利用する側が、もし感情などを持たない本当に冷徹非情な人間だったならこれほど暗澹たる気分にならなかったかもしれない。隙にならぬほどかすかな刹那、垣間見せる人間らしい情愛、複雑な感情。
ため息が出る。
ダークエルフの口づけは死の宣告。本当に最後まで、アマデオに対してのベラの感情はその素顔を見せなかった。まさしく鉄壁。溶けることの無い絶対氷河のままでした。だけど、あの口づけ、死の宣告こそがベラの、ベラなりの最大限のアマデオへの回答だったのではないだろうか。
本当に、温かみなんて欠片もない冷たさだけで出来たような女性だったのに、この闇に沈んだ迷宮のような世界の中でこの人、ベラにだけ、揺るがない強い優しさを感じさせられました。
なにか、不思議なキャラでしたね。