ひとひら 4 (4)

【ひとひら 4】 桐原いづみ アクションコミックス


先日、去年の漫画のまとめ記事を書いた際に桐原いづみの【白雪ぱにみくす】を再読して、この漫画家の作品の面白さを再認識したわけですが、いつまで経っても続きが出ない!
なんだか我慢が出来なくなったので、既刊の桐原いづみ作品を纏めて購入してしまいました。
実はこの【ひとひら】。てっきり完結してるものだと思い込んでおりました。アニメの方で、野乃先輩たちが卒業するところで奇麗に終わってたんで、原作もそういうものだと……丁度、既刊の最新巻であるこの四巻で野乃たちが卒業するエピソードが来てましたし。
でも、こうして読んでみると、確かにそうなんですよね。あれで終わってしまうと、主人公である麦の物語としては中途半端になってしまうんですよね。
最後の舞台で、遂に麦は自分の意志で演じるということをします。でも、結局それはまだ、放り込まれた状況の中で頑張っただけで、流された結果だということになります。
まだ、彼女は何も始めていない。
その意味では、野乃先輩が卒業し、佳代が留学してしまうという状況は、今まで逃げ回り手を引いてもらうことでしか進むことのできなかった麦が、自立しなければならなくなったということ。
あの舞台で得たものは仄かな自信と勇気。
彼女が自分一人の意志と力で歩きだすその第一歩こそ、夢を叶えるために旅立つ佳代を、応援し笑って見送ること。
心細さと寂しさと、親友の旅立ちを祝福してやれない自分への情けなさ嫌悪感に打ちのめされながら、まともに佳代と顔も合わせられずに逃げて逃げて逃げ惑い、それでも最後にはちゃんと親友との別れに向き合えた麦。
どんだけ遠回りしてるんだと言いたくなるけど、でも今までのこの娘の情けなさを見てたら、それだけのことでも成長した、強くなったと感慨がわいてくる。
頑張った。がんばったよ、麦。

そして、迷って迷って迷った末に、今度は無理矢理でも流されてでもなく、自分の意思で、麦は演劇部に入部する。
ただそれだけのことが、この娘にとってどれだけ偉大な一歩だことか。これは、あの演劇研究会最後の公演にも勝る麻井麦にとってとてもとても大きな一歩だったんじゃないでしょうか。
自分のやりたいと思ったことを見つけ、自分一人で決断して、自分一人の力でそれを実現させるために前に進む。どれも、以前の麦では決して出来なかったこと。
もちろん、そんな彼女を見守ってくれる甲斐やちとせといった周りの友達もイイ子たちなんだよなあ。麦は、佳代といい、ああいう面倒な性格のくせに友達運はいいんですよねえ。
ちとせなんか、傍目には無神経そうなキャラなんだけど(失礼)、演劇部に入ることを迷いに迷って迷いまくってる麦に対して、頭禿げるんじゃないかってくらいに焦れて苛立ってジタバタしてたくせに、結局最後まで麦に変な口出ししてこないんですよね。ちゃんと、彼女の意志を尊重してじっと我慢してる。もともと、初っ端の登場時から傍若無人な振る舞いしてるくせに肝心なところで物凄い気配り見せてたもんなあ。オリナル、可愛いなあ。
甲斐も可愛いんだよなあ、この男の子め♪ わたしぁ、キャラの男女の性別を問わず、こういうちょっと空回り気味だけど、優しくて初々しい子は大好きです、はい。

なんか、微笑んでしまったのが卒業後、というか公演後の野乃先輩。まさに、憑き物が落ちたかのように温和な性格に(笑
あの常にピリピリとした緊張感はどこへやら。やっぱり、鷹揚に構えてたけど、かなり気を張ってたってことなんでしょうねえ。意地と信念でガチガチに心を固めて、必死になって。生き急いでるんじゃないかと思わせるくらいに鬼気迫るものがあったわけですけど……。そういうのが全部流れ落ちちゃうと、野乃先輩ってああいう風になるわけか。
まだ喉を痛める前。演劇部に入って、美麗と一緒に演劇に夢中になってた頃の彼女は、こういう風だったのかもねえ。
それにしても、美麗とのコンビは良く似合う。二人でいることが本当に自然で。親友、と一括りに言っても、美麗と理咲じゃまた違うんですよね。
麦と佳代、麦とちとせがそれぞれ趣が違うように。
その辺の描き分け、というか人間関係の微妙な雰囲気の描写が面白いやらすこぶる手触りがよくて、好きだなあ、うん。
演劇部の面々も、またこっちはこっちでキャラ濃いし(笑
あの新部長は大物なのか小物なのか。あのいい加減さ、かなり好きですけどw