ロミオの災難 (電撃文庫 ら 4-5)

【ロミオの災難】 来楽零/さくや朔日 電撃文庫


これは……怖い。確かにちょっと怖い!!
怖いけど、かなり笑ってしまいましたよ、これ。
あらすじ、ミスリードすぎるですよ(苦笑
てっきり、陰惨で鬱々としたホラーテイストの惨劇モノとか、醜悪な人間の感情を生々しく突きつけられるような重苦しい話かと思いきや、けっこうこれコメディテイストの青春恋愛劇じゃないですか?
当人たちは必死で真剣かもしれないけど、他人事の災難ほど見世物として面白いものはないわけで。

演劇部の次回公演の題材として、部室のどこからか出てきた古いシェイクスピアの台本を使うことにした演劇部五人組。ところが、配役を決めた途端、台本に宿っていたかつてこの台本でロミオとジュリエットを演じようとしていたかつての演劇部員たちの抱いていた感情が、彼らに宿ってしまう。
その感情というのが、ロミオ役だった男子部員に対して他の四人の女子部員がそろって抱いていた恋愛感情で、五人は突然宿してしまった他人の感情に振り回されることに。
なにしろ、前回はロミオ役以外は全員女性だったけど、今回はロミオ役をやることになった主人公の如月以外に、もう一人男子部員の西園寺がいるもんだから、如月くん。図らずも西園寺から迫られてえらいことに(爆笑
と、傍から見てると笑い話なんだけど、当人たちからすれば、自分のものとは違う強い感情、しかも当時の女子部員同士が抱いていた嫉妬や妬みといった負の強い感情にも振り回され、けっこう真剣に大変な目にあってるわけで、笑っちゃいけないんだけど……でも、傍から見てると面白いんですよねえ(苦笑
他人の感情とはいえ、今まで恋愛感情というものを抱いたことがないことに小さなコンプレックスを持っていて、これまで良い男友達だった如月に抱いてしまう初めての感覚に、複雑な思いを抱く雛田香奈美。
如月に抱いていた仄かな思いに、黒く濁った負の感情を上乗せされ、どこまでが自身の感情なのかわからなくなり、自己嫌悪に苦しむ新堂藍子。
初めて会ったときから、雛田に一目惚れしていたものの、ようやく自分に向けてくれた彼女の好意は他人の偽物の感情で。好きな人からの手放しの好意を受け取るわけにもいかず、悶々とした思いに頭を抱える主人公、如月行哉。
他の村上真由にしても、西園寺次朗にしても、このままなら、呪いのような過去に事故で亡くなった五人の演劇部員の遺した黒い感情に引きずられて、酷い惨劇を向かえる、というシナリオ展開も考えられなくはなかったんだろうけど、この作品はそういう方向には振れませんでしたね。
むしろ、自分の中に蠢く感情に真っ向から対決し、劇を完遂することで呪いを払拭しようとすることで、それまでの普通の友達関係だけでは見えてこなかったお互いの内面が通じ合い、より一層理解と友情を深めていっているようにすら見えました。
心の根本のところでサッパリとしたイイやつらです、この子たち。
もちろん、この子たちにもドロリと濁った黒い一面はあるんでしょうけど、今回はそうした負の側面は呪いのせい、と割り切ることで余計にすっきりと悪い方に引きずられることなく、自分の気持ちと向き合えているように見えました。
読んでて、本当に不快感や嫌な感じのしない、気持ちのいい恋愛劇。
最後の本番の劇では、それぞれの当人の意志を上回る、負の感情に引っ張られて各人が仕掛けてしまった細工や罠、次々と起こるトラブルの嵐を、アドリブの連続で凌いでいく様が、凄いやら笑えるやら(笑
はらはらドキドキのスリル満点、という意味では、今まで見てきた作中演劇の中では一番だったかもw
単なる妨害工作ならともかく、どれも自分たちが仕掛けたものだから、本人たちは必死なのはわかるんだけど、なんか間抜けに見えてしまって(笑
でも、お見事。最後までギリギリの瀬戸際で粘りきり、ラストは脚本から外れてもはや即興劇になってしまったにも関わらず、間髪いれずのフォローとひらめき、コンビネーションで凌ぎ切って見事に劇を演じきった皆の頑張りとパワーには、手放しで拍手喝采。お見事! よくやった!
まさしく、過去の呪いに真っ向から打ち勝った、君たちの完全勝利だ。

劇を終えることで、彼らに宿っていた他人の感情は消えてしまったけれど、何もなかったことになって元に戻る、なんてことになるわけがなく。
少し変化を宿した自分の心をそれぞれ胸に秘め、新たに始まるそれぞれの新しい関係。
最後まですっきりと気持ちのいい、青春劇でございました。
あー、面白かった! これはおすすめ。