狼と香辛料 (7) (電撃文庫 (1553))

【狼と香辛料 察。咤蕋筍紕達錚譯錚s】 支倉凍砂/文倉十 電撃文庫





本編では主にロレンスの視点で描かれるこの【狼と香辛料】なのですけど、この惨では初めてのホロ視点の短編が掲載されてるのですが……。
ホロってば、ロレンスのことめちゃくちゃ大好きじゃないか。
時系列的には二巻の後。体調を崩してしまって倒れてしまうホロと、その看病につくロレンスの話なんだけど。いやはや、これは意外で驚かされた。ホロが、ロレンスに惚れてるのは分かってるつもりだったけど、もう少し目上の視点からちょっと頼りない青年を愛でるような愛しむような感じで好いているのかと思ってたんですが、いつも底の知れないように振舞うホロの内心が明らかになってるこの話を読んでると、もう普通の年頃の少女みたいに心の底から惚れ抜いてるじゃありませんか。
もしかしたらこれ、ロレンスは色々とホロの気持ちについて勘ぐりすぎじゃない? ロレンス視点だと、ホロって好意の中にも色々と一物抱えてるみたいな捉え方してるけど、ホロの内面を見てたら思いのほかストレートにロレンスのこと好いてるんですよね。すごく浮かれてるんじゃないかって思うくらいに、ロレンスと一緒に旅することが楽しくて仕方がない、ロレンスと話すことが嬉しくて仕方ない。もう、ロレンスに夢中じゃないか、と思うくらいにロレンスの一挙手一投足に注目し、思いを巡らせている。
五巻などで、ホロがロレンスとの旅を楽しいまま終わらせたい、と一度別れようとした行為、どうしてそういう考えに至ったのか理屈では理解できたんですけど、気持ちの方はちょっと納得いかないものがあったんですよね。でも、今回の短編【狼と琥珀色の憂鬱】を読んで、ストンと腑に落ちた気がします。この短編でのホロのロレンスへの夢中振り、惚れっぷりを見たら、この楽しくて楽しくて仕方ないという気持ちの高ぶりを見たら、同時にそれが失われた時の、焚火の火が消えるように燃え尽きてしまうような結末を想像した時にそれがどんなに恐ろしく心を黒く塗りつぶしてしまうものなのか、なんとなくホロの気持ちが感覚的に実感できた気がします。ロレンスの視点を介在すると伝わりきらなかったホロの心情が、なんかダイレクトに伝わってきたなあ。
どうして、ホロが羊飼いのノーラを目の敵にするような言動を取っていたのかも、ちょっと不思議だったんですが。そうかー、最後のホロの例えには吹き出すとともに盛大に納得。そりゃ、目の敵にするよなあ(笑
素直に考えりゃ、別段特別不思議がるような話じゃなかったわけだ。でも、読者から見えるホロはロレンスの視点からみたホロだから、別の何か理由があるんじゃないかと勘ぐっちゃってたんだな。普通の少女として考えたら、ほんと、実にストレートで分かりやすい態度じゃないか(笑
ああ、本当にロレンスって、こと色恋沙汰に関してはホロの言うとおりなんだ。変に商人である自分に照らし合わせてホロを捉えてるから、妙な錯誤が出てくるわけだ。完全に色眼鏡入ってるなw 

それでも、完全に女性の扱いに疎い輩かと言えば、そういうわけでもなく卒なく女性の機嫌を取る手管も有しているわけで。
そんな話が、もう一つの短編【林檎の赤、空の青】。
これ読む限り、ロレンスは全然鈍いヤツ、というわけじゃないんですよね。気を持たせて、間隙を突くように相手の女性の喜ぶことを出来る男でもあるわけで。同時に、商人としての強かさも失わず、うまいこと一石二鳥を得ているんだから、ホロとしてもロレンスは単なるお人好しの頼りない若者ではなく、商いの相棒としても、番いとなる雄としても、歯ごたえのあるイイ男なわけだ。一緒にいて飽きることもなさそうで、何度も言ってるけど、そりゃ惚れるよなあ(笑


もう一編掲載されているのが中編の【少年と少女と白い花】。紹介文を読む限り、どうやらホロがロレンスと出会う前の話らしい。ロレンスの時代より教会の存在感がないことや、ホロ以外の神が登場することなどから、だいぶ昔の話になるのかな? ホロが村の守り神になる前。ヨイツから旅に出て各地を巡ってる最中の話なのかもしれない。
主人が亡くなり、屋敷を追い出された小間使いの少年と、今まで屋敷から外に出たことのなかったという世間知らずの少女の旅路に、ホロが現れて……。
ホロって、なんだかんだと世話好きですねえ。放っておけば野垂れ死に確実の子供たち二人の旅を、甲斐甲斐しく面倒見て、世間知らずの二人に現実の生き様を教え鍛え、男の子にはオスとしての在り様を叩き込み、人との付き合い方を知らない少女には気持ちや想いの持ち方、伝え方を仕込み、二人の心の距離を近づけてやったり……神様を名乗る存在にしては、面倒見良すぎですって(笑
ロレンスには幼い一面や甘えたところも見せるホロですけど、こっちの話では完全にちょっと意地悪だけど頼りになる頼もしいお姉さん(笑
いや、ロレンスといちゃいちゃするところは一切ない話でしたけど、面白かったーー。短編も含めて、今まで見れなかったホロの新しい一面を山ほど見れて、実に堪能させていただいた一冊でした。

これ読む限りでは、この作者さんは【狼と香辛料】とは別のシリーズを書いても、まったく面白さは落ちそうにないと確信しましたわ。しばらくはホロで十分満足ですけど、このシリーズが終わっても、いつまでも追いかけていきたいですね。