阪急電車

【阪急電車】 有川浩


そ、そうか。阪急今津線って、マイナー路線だったのか。言われてみれば確かにその通りなんだけど、言われないと気付かなかったなあ。
というわけで、完全に地元なので、作中の車窓からの風景、駅を降りての街並みの描写など、いちいち目に浮かんで、もうニヤニヤしっぱなしでした。
こういう風に他人の目を通して述懐されると、見なれた風景もどこか違って見えますねえ。
しかし、あれわらびだったのか。んなの、気づかんですよ。見たってわからんw
中州の「生」の文字も、存在自体知らなかった。もう今となってはあまり、南口から宝塚方面へは電車で移動しないからなあ。上流側にあったみたいなので、大橋からは見えたんだろうか。でも、車で渡ってるときには川の方なんか見てないし。まだあるんなら、すぐに見に行くんだけど…。

お話は、この阪急電車に乗り合わせたことで、新しい出会いや新しい道を歩き始める人たちの折り重なるようなエピソード。同じ車両に乗り合わせたその場限りの行きずりの出会い。わずかに交わした言葉やふと耳にした見ず知らずの相手の会話という些細な出来事から、がらりと変わる人生の岐路。
中には最初は苦いものを抱えていたり、鎖に捉われていたり、と重たい荷物を背負っていた人もいるけれど、最後にはみんなすっきりとそれらを振り払い、胸を張って進みだす、どの登場人物も最後にはよい区切りを迎えていて、読み終えて気持ちの良い物語でした。
恋人同士のお話も、どれも読んでてニヤニヤさせてくれるもので、なるほどこれが有川浩の恋愛譚の実力の一端なわけですか、納得。
それぞれの登場人物の絡み方や、再会の仕方、一期一会の友誼の交え方など、とても軽妙で味わいがありつつ、単純に順送りの絡みじゃなく色々と偶然複雑に絡み合ってて、何気に上手いなあと感心させられました。
なかなか電車でこうも気軽に初対面の人に声をかけるのは難しいですけど、良い出会いとはこういうものかもしれませんね。
いや、それにしてもこうもリアルに情景が目に浮かぶのは、本当にうれしいなあw

ちなみに、自衛隊のヘリは確かによく編隊組んで飛んでますよ。ですので、無理やり挿入、というほどではないはずです。この辺に住んでりゃ、定番の光景ですしね。

個人的には、ミサが一番好きかなあ。えっちゃんや、翔子。かっこいい時江ばあちゃんや、ほんわかした圭一と美帆のカップル。酒飲みの図書館カップルも良かったんですけど、ミサの絡むエピソードがみんなツボだったものですから。カッコイイじゃないですか、彼女。決して世渡り上手いタイプじゃないんだろうけど、自分に向けられた一言を受け止め、消化できる判断力もあるし、それらに培われた良識や正義感も自分を律して制御してるし。外見とは比べ物にならないくらい、中身の詰まった女性に見える。だから、最後あの人と繋がるエピソードは、なんか変に新しい恋人ができるより、しっくりきたのと同時に、嬉しかったなあ。
でも、みんな大好きです。いいなあ、これ。
この物語に登場したみんなに、幸有らんことを。