千の剣の舞う空に (ファミ通文庫 お 5-1-1)

【千の剣の舞う空に】 岡本タクヤ/柏餅よもぎ ファミ通文庫


[第9回エンターブレインえんため大賞<優秀賞>]。

現実世界とオンラインゲームの世界が交錯するボーイ・ミーツ・ガールの物語なんですけど……硬派だ。この作者の筆致のせいか、それとも主人公の性格ゆえか、現実の人間関係にしても、オンラインゲームに対する姿勢もとてもストイックで、どこか求道的なものすら感じてしまう。
あらすじだけ見たら、一度人生に挫折した少年がゲームにのめり込み、現実に背を向けてしまっていたのだけれど、ゲームを通じて知り合ったプレイヤーが、自分のクラスメイトと偶然気づき、その子と現実とゲームとのふれあいから、自分のありようを見つめなおし、さらには彼女が自分と似た人間であることを知り、お互いに絆を結びながら現実の中にしっかりとした立ち位置を見つける。とまあ、この手のストーリーとしてはとてもオーソドックスなもののはずなんだけど……。
書き方でどこまでも緩くなりそうなものなのに、書き手によってはここまで渇きに喉を掻き毟るような話になるものですか。こりゃ、良い才だ。
自分の人生そのものをなげうつように何かにのめり込む生き様、孤高の闇……その麻薬のような魅力と陶酔を余すことなく伝えつつ、それを否定するのでも拒絶するのでもなく、また別の在り方として誰かとつながること、絆を結ぶことの良さを描いているところに、なにか心地よい爽快感があったなあ。いや、対比としても表現していないのか。闇とアスミの繋がりなんて、その最たるものだし。
うん、なんにせよ面白かった。