ベン・トー―サバの味噌煮290円 (集英社スーパーダッシュ文庫 あ 9-3)

【ベン・トー サバの味噌煮290円】 アサウラ/柴乃櫂人 スーパーダッシュ文庫



あはははははっ、すげえ! これ、すごい! すごいよ(笑


ありえねえぐらいすっげえバカだ、これ(爆笑


技術力のある変態が本気になると始末に負えないことになる、という慣用句があるわけですが(無いよ)、なまじ実力のある作家が本気で手抜きなしにバカやるとこんな恐ろしいものが現実に顕現してしまうという具体例が登場してしまいましたな。世紀末か、この世は。
ただ半額弁当を手に入れるためだけの闘争に、彼らはなぜここまで魂と誇りを懸けるのか。
この作品が本当に馬鹿げたくだらないものへと堕ちていないのは、この狩りに躍りかかる狼たちが、自分たちが世間から見ればどういう存在であるかを確実に理解しているところにあるのかもしれない。傍から見れば、値下げされた古い弁当に群がるみすぼらしいだけの一団。それを受け入れた上で、彼らは闘争に挑むのだ。
その狩りの果てに手に入れたものの価値を、知ってしまったがゆえに。彼らは誇り高き狼であると同時に、禁断のリンゴを口にしてしまった愚かな人間そのものなのである。
……と、いささか熱く語ってしまったようだ。
然るに、半額のシールが商品に張られるのを間近でよだれを垂らしながら待ち構えているのは、醜い豚である、との言には深くうなずかざるを得ない。
あれは遠方から虎視眈々と、だが意識をそちらに向けることなく、音と気配で商品にシールが張られる瞬間を察知し、速やかかつ静かに現場へと進攻し、目標である商品を的確にゲットする。これが作法というものよ。もちろん、何を確保するかは事前の棚前通過偵察により掌握しておくべし。

それにしても、結局白粉さんは最初から最後まで変な人だったなあ。何気に控えめで自己主張の少ない人だったから目立たなかったけど、この人メイン級のヒロインだったにも関わらず徹頭徹尾生粋のヘンタイのまま推移したぞ? 主人公への好意とか恋心の芽生えとか友情とか信頼関係の情勢とかぜんぶほっぽらかして最後までヘンタイに徹したぞ!?
いや、目を凝らしてみたらそれらしい反応を示していないこともないように見えなくもないのだが、それ以上にヘンタイとしての在り様があまりにもナチュラルに常備されていたので、気にする余裕もなかったですよ。だからなにそれ?
メインヒロインであろう槍水仙の二つ名である【氷結の魔女】の由来といい、なぜ【魔導士ウィザード】はわざわざ半額弁当を入手するのに毛皮の襟付きコートと革手袋を装着するのかという疑問と言い、とにかく馬鹿らしく、ってかカラー口絵のあまりの本気の馬鹿らしさに、この作品の神髄を見た。本屋でこの本を手に取ることがあれば、まず口絵を見開いてみることをお勧めする。あの絵にはこの作品のすべてが凝縮されていると言っても過言ではないと評価したい。
ちなみに豚の角煮弁当は美味そうだった。本当に美味そうだった、ちくしょう。


あと、爆笑だったのがあとがきですかな。たった2ページにも関わらず、なんだあのフリーダムさは(爆笑

とりあえず続き出るんですよね? 【魔導士】と【氷結の魔女】の過去の因縁とか、投げっぱなしのまま回収してない伏線もありますし。
出たら出たでいろいろすごいと思うけど。
いやそれにしても、これは素晴らしいバカでした。今どきここまで高潔で真剣で儚く高貴なバカ話を見ることになろうとは。あの前作からどうしてこうなるんだ、ほんとに(苦笑