さよならストレイウルフ 2 (2) (TOKUMA NOVELS Edge)

【さよならストレイウルフ 2.赦されざるもの】 嬉野秋彦/菅野博之 トクマ・ノベルズEdge


どんな親しい人でも、良く知っていた相手でも、時の流れはいやおうなく人間を変えてしまう。それが、生きること自体が過酷で絶望的な世界ならなおさらのこと。
魔龍王ベラッツェラとの決戦に敗れ、三千年後の世界に飛ばされてしまったジュノーたち。流れ着いた世界は、ベラッツェラとその眷族が支配し、人間たちは虐げられ隷属させられるだけの存在に堕ちた世界となり果てていた。
六人の仲間たちは同じ時間に跳ばされたわけではなく、それぞれ何年か、何十年かの時間差を隔てて未来へと送り込まれ、主人公のジュノーが未来に流れ着いた最後の一人。
見慣れぬ未来世界に戸惑いながら、ようやく探り出した仲間の消息は、リーダーだった男は病を得てすでに病没し、弟分だった少年は十年以上の歳月をこの未来で過ごした末に戦意を失い、ただ平穏な暮らしを望むくたびれた中年へとなり果てていた。

というところが、一巻のあらましなわけですが、一巻の最後に合流する兄貴分のカザークと、幼馴染にして恋人でもあったマハールも、ジュノーが知る彼らとはどこか違ってしまっていたわけですが……。
よくあるパターンだと、こういう時の流れを隔てた再会で人が変ってしまっていたら、かつてのその人の面影を全否定するような、別人みたいな変わりよう、というのになりがちなんですけど、この作品のカザークやマハールは、ちょっと違うんですよね。
かつてとどうしようもなく変わってしまった部分と、でもやはり変わらない部分が上手く混在して同居している。彼ら二人が未来に流れ着いたのは四年ほど前となっているのですけど、その四年という歳月が非常にリアルに感じられる微妙にして決定的な変化なわけです。
これが一巻のジントなんかだと何十年もの時間差があったので、完全に別人みたいになってますけど。

で、こんな見知らぬ世界に放り込まれ、親しかった仲間たちも以前とは変わってしまっている。主人公のジュノーとしたら、たまったもんじゃないはずなんですけど……このジュノー、そんじょそこらのなまっちょろいラノベ主人公とはどっか違います(笑
いや、こういう特異なキャラクターの主人公ってちょっと他じゃお目にかかったことないなあ。
口は減らないわ、軽口は途切れないわ、泰然自若としてるわ、恍けてて喰えないわ、とにかく一筋縄でいかない性格なのに、不思議とひねくれているという印象はなく、むしろ人品は素直でまっすぐ。単純なくらい清廉で、想った事は隠さずなんでも率直に告げることを厭わない、という風に見える。
矛盾したキャラクター要素がまったく反発せず美しいほど見事に融合してるんですよね。
思えば、嬉野作品で、女性キャラ、ヒロインでならこういうタイプのキャラはいたけど、主人公で、というのは見たことなかったかも。口の減らないキャラとか食えないキャラは、大概性格も悪かったし(笑
性格の素直で綺麗な、口さがない人を食うようなキャラ、ってまたややこしいなあ。でも、これがやたらと面白く、ぐいぐい物語を引っ張ってってくれる主人公になってるんですよね。
かなり重苦しく雰囲気も暗くなりそうな世界観なのに、このジュノーが動き回るだけでなんかこう、希望みたいな淡い空気が立ち込めてくる。
カザークもマハールもずいぶん荒んでひどい有様になってたけど、ジュノーと接してるうちに澱が払われたみたいに、どこかスッキリとしてきたし。特にマハールなんか……可愛いなあ、もう(笑
かつては年下の幼馴染だったのが、今や年齢的には年上のお姉さん、しかも冷酷非情の笑わないクールビューティーになってしまったわけですけど、このジュノー相手じゃあ、この過酷な未来世界で自分を守るために必死に凝りかためてきたものも、全部吹き飛ぶわなあ。
ジュノーがいない間に彼女を襲った悲惨な出来事、自分はもっと救いようのないものを思い描いてたんですけど……いや、これも十分えぐいし、女の子としての気持ちを考えたら、ジュノーによそよそしく接してしまうのも無理はないか。好きな相手だからこそ見せたくない、見せるのが怖いものもあるだろうし。なにより、彼女の感覚からしたら四年近く会ってなかったわけだし。
にしても、ジュノーにまっすぐすぎるくらいの想いをぶつけられて、凍っていた想いが氷解したあとのマハールは、細かいしぐさや表情やらがいちいち可愛くて、たまらんなあ(w

一方、敵方のザバラオンも、二巻で描かれる内情を見ると、三千年近い支配期間を経るうちに、色々と複雑な事情を抱えてるのが透けて見えてくる。
ドッパのザバラオンらしからぬ懊悩の内容をみると、永劫に続くように思えるザバラオン族の繁栄にも、どこか閉塞感の影らしきものが垣間見えてくるんですよね。そうした中で、新たな、だが異端の生まれである、ベラッツェラの娘の出現は彼らの未来にどういう影響を与えるのか。

単純にベラッツェラを倒して終わり、という上映二時間映画的展開では終わらなそうな顛末に、次巻への期待が募ります。
とりあえず、ジュノーはマハールといちゃいちゃすることに自重するようなことは一切考えなさそうなキャラなので、その辺は存分にニヤニヤさせてくれそうw