ユーベルブラット 7 (ヤングガンガンコミックス)

【ユーベルブラット 7】 塩野干支郎次 ヤングガンガンコミックス



数十年の時を経て、一人の男がはじめた復讐は、やがて国家そのものを揺るがす動乱へと膨れ上がっていく。
彼が国家の重鎮であり、救国の英雄である七英雄たちを復讐の相手として討っていく以上、それは単なる個人の仇討ではなく望むと望まざると国家への反逆となってしまう。
偽りの英雄である七英雄と違って、ケインツェルはかつて本当に世界を救った本物の英雄。復讐鬼となりながら、かつての姿を失い亜妖精の身体となり果てながら、その姿は人を魅了させずにはいられない。
討たれる側の七英雄たち、今回の砲台伯バレスターにしても、今となってはろくでもない悪人となり果てているけど、彼を裏切る前の仲間だったころの彼は、アシェリートを慕い、友情を覚え、信頼していた事が垣間見える。
かつて望んだ道を失い、悪となり果ててしまったかつての仲間を切り捨てるとき、ケインツェルは涙を流していた。一人目を切ったときも、二人目を斬ったときも、こんなに悲しそうに、辛そうに涙を流してしまうこの男の心は、どうしてこんなに優しいままなんだろう。いっそ、復讐に狂い、悪鬼羅刹となり果ててしまえば楽だろうに。
なのに、憎悪と憤怒は消せぬまま、突き動かされながらも、彼の心はあの真実の英雄の頃のまま。
弱きものを見捨てられず救う心。自分を慕って追ってくるものを守り育てて、自分が育った剣の館の後輩の示した才能に喜びを隠さない。どれも、自分の復讐を果たすには邪魔なもののはずなのに、彼はあえてそれを枷とするように、黙々と背負って、だが復讐の道に一片の揺るぎも見せない。

そして、その真の英雄の姿に感化されたかのように、もう一人の主人公が自分の目指す英雄になるために、動き出す。
もう、この展開ってエルサリアも、もう一つの主人公パーティですよね。
ケインツェルの正体に気づき、その正義に共感しながらも、国家への忠誠のために彼を倒さなければならないと思い定めて苦しむロザンと、剣匠の名を継がんと野望を募らせ、だがケインツェルに完敗し挫折の味を覚えた、アシェリートの後輩にあたる奴隷剣士の少年イクフェス。この二人のコンビの動向も見逃せない。
なんか、単純な復讐劇から、かなり壮大な群像劇へと物語の規模が膨れ上がってきた感じです。尖り澄ました情念渦巻くあの凄まじい復讐劇を維持したまま、果たしてこの壮大な大河ドラマを展開できるのか、かなり難しそうですけど……期待は抑えられないです、わくわく〜〜