たま◇なま~ほしいものは何ですか?~ (HJ文庫 ふ 3-1-4)

【たま◇なま 〜ほしいものは何ですか?】 冬樹忍/魚 HJ文庫


な、なんか途中でもの凄いメタ的な発言というか、著者の魂の叫びが混じってたような気がするぞ?
原稿料とか
原稿料とか
原稿料とか

……(爆笑)

この本書いてた時、そんなに原稿料のこと考えてたのか? 考えてたのか? いや、まあ頑張ってください。

相変わらず三点リーダーが多い文章で、今回なぞさらに無口無言の蒼の子がメイン級に出張り、その無反応な蒼の子に透が一生懸命話しかけるもんだから、三点リーダーの数がえらいことになってるけど、不思議とこの作品はそれでOKだと思えるんですよね。
作風からか、この著者の独特の間というかテンポに、この三点リーダーは欠かせない要素みたいになってるので。
敵だなんだというのは結局、重要な要素ではないのは最後のあっさりとした展開が物語っていますけど、この人の書くチンピラ、悪人はけっこう本気で虫唾が走る思考法で、扱い自体は雑魚にも関わらず存在感はタップリなんですよね。【敵】の物理的攻撃力ではなく、この卑劣で悪辣で愚劣な精神構造による心理的圧迫感こそが、主人公である透や彼の周りにいる人々に対して大きな作用を及ぼす要素なので、まさしくこの構図でいいのでしょうけど。
物語の主軸となるのは、やはり欠落した人間性の成長になるんですなあ、この作品は。巻を重ねることで、生まれたての非人間的存在から人間らしい情動を獲得した由宇は、夏休み明けを目途に学校に通うことに。その細々とした準備を整える日常がこの巻の主軸なわけですけど、確かに初期と比べて由宇の機能性はかなり劣化している感じ。飛躍的学習能力も落ち着きを見せ、ラーニングにおける集中力もすぐに気が散って途切れがち。
それはとても人間的なんだけど、存在としての完成度は確実に劣化している。完全性と人間性はやはりイコールでは結べないのか。それでも、そんな変化が好ましく安心感を感じさせる描き方を実現しているのは、上手いしイイなあと思うわけです。
一方で、もう一人の人間的感性の欠落を抱えた少女【蒼】が、今回本格的に透たちに関わってくるわけですが、彼女への透のたどたどしいアプローチが、なんか涙ぐましい。
この主人公、卒のなさとはまったく縁がないし、コミュニケーションの取り方は決してうまいとは言えないんだけど、それでもこのひた向きさは非常に好感度高いんですよね。フラグ立てとはちょっと違う、この必死で切迫感のあるコミュニケーションの取り方、しつこさは、やはり彼の過去や背景が関係してるんだろうけど、安い軽さがないので。由宇にしても蒼にしても、彼の言葉に心を動かされてしまうのに納得感があるんですよね。
まあ、それ以上に、出てきた途端に蒼の子の石化した心にひびを入れた灯璃が凄いんですけど。透の絶望を癒し、由宇の心を紐解き、今また蒼の魂に鍵穴を見つけてみせた灯璃。むしろ主人公的なのは彼女じゃないのかと思うくらい。
今でこそ脇に徹してる彼女ですけど、本気でメインヒロインの座を狙い始めたら、他のヒロイン蹴散らされるぞ、これ(笑