恋のドレスと黄昏に見る夢 (コバルト文庫 あ 16-19 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー)

【ヴィクトリアン・ローズ・テーラー 恋のドレスと黄昏に見る夢】 青木祐子/あき コバルト文庫


シャーロックとクリス。二人の恋心が近づけば近づくほど、むしろ状況が悪い方悪い方へと転がっていっているような気がしてきた。泥沼だ。
結局、恋のドレスと闇のドレスというのは表裏一体。ドレスの作り手であるクリスやリンダの、相手への心がダイレクトに反映されてしまっているのか。シャーロックのイメージじゃないけど、アディルの恋のドレスに心奪われてしまったシャーロックみたいに、あそこまで劇的に人の心を動かしてしまうと、今まで良いイメージしかなかった恋のドレスもまた、着る人の心の負の部分を膨らませてしまう闇のドレスと同質のものに見えてくる。ここまでの効果があるなら、それはもう人の心を操る魔のドレスと言われても仕方がないくらいに。
ドレスの正負の振幅が、作り手の精神と容易にリンクしてしまうとなれば、その危うさはなおさら目につく。
ましてや、今のクリスは、シャーロックへの想いと母親との再会に非常に危うい精神状態にあるわけだし。
こう言う時こそシャーロックが支えてやれればいいのだろうけど。
なんだろう。彼は彼なりに必死に動き回ってるんだけど、いい意味でも悪い意味でもシャーロックって貴族であることから離れられないんですよね。クリスたちの付き合いから、変化してる部分も多いし、因習や立場、身分の差などを乗り越え、まずクリスを優先しようとする男気もある。
だけど、どこか根柢の部分でやっぱりこいつは貴族で、クリスとは違う人間だということなのか。お互い好きあい思い合い、恋心を伝え合い、お互い離れたくない、一緒にいたいと思っているのに、どこか二人には決定的な断絶があるような気がするんですよね。それが、不安を募らせる。破滅の予感をにおわせる。
段々と、二人の関係が周囲までも巻き込みつつあることも、重苦しい空気を助長させている。
アディルに至っては、客観的にみると闇のドレス云々に巻き込まれた件については完全に被害者だし。
最後のパメラなんか……。
パメラは、この娘は本当に。なんか泣けてくるくらいに、いい娘なんですよね。クリスへのこの篤い友情はなんなんだろう。クリスがいなければ、パメラの人生はまったく違った悲惨なものであったことは確かなんだろうけど、そういう恩とかなくてもこの娘はクリスに対して同じ態度を取ってたように思えるんですよね。
クリスに逃げてもいいんだと告げた時の彼女。完全に自分よりもクリスの幸せを、心の平穏を優先してました。迷いもせず。
幸せをつかみかけていた彼女の決意。今の自分の恋に一杯一杯で余裕のないクリスは親友の決意にまるで気づいている様子もなく、それが腹立たしいほどもどかしい。
イアン先生には、なんとか頑張ってパメラを助けてほしいものです。今となってはパメラのことを一番に考え、幸せにしてやれるのは彼しかいないはずなので。
こうなると、シャーロックとクリスよりも、此方のパメラとイアンの方に思い入れが寄ってしまってきてるかも(苦笑