カッティング3~Case of Mio Entanglement~ (HJ文庫 は 1-1-3)

【カッティング 〜Case of Mio Entanglement〜】 翅田大介/も HJ文庫


どこが、自分は単純になっただ、この男は〜〜(怒
本当に物事に対してシンプルになれたのなら、こうも目の前の問題に対して迂遠な思考を辿ることもないだろうに。変に思慮を働かせてしまうことで、どんどんと物事の本質から遠ざかってしまい、当初の目的から外れて思考は求めるべき答えとはかけ離れたところへと駆け出していく。
結果として訪れるのは、決定的なすれ違いだ。
本当ならそこまで拗れるような大きな問題ではなかったはず。ただ、単純に自分の胸にともってしまった不安を相手に打ち明ければ良かった、ただそれだけのことなのに。
些細な不安だったものは、自分の中だけで醸成するうちにどんどんと膨れ上がり、怪物と化していく。それは、カズヤにしか認識できない戯けた怪物。
思えば、この男はやはり人間関係というものに経験が圧倒的に不足しているのだろう。自分ひとりで心理見解を捏ねまわしていくことに慣れ過ぎている。ふとしたことで、交感を閉ざして自分ひとりで思索を弄り回してしまっている。それも半ば無自覚に。
みさき先輩に、もうこれ以上ないくらいに分かりやすくシンプルで特効薬的な助言を頂いてさえ、そのアドバイスをありのまま受容できずに【解釈】を加えてしまう。結果、そこから得るべき答えの本質から遠ざかってしまい、アドバイスを無駄にしてしまっている。
度し難いバカだと言えばそれまでなのだけれど……。問題は、この男の魅力の大半はそういう面倒くさいところにあるんだよなあ。

双子には悪意があったようには思えない。彼女らがカズヤとミオに近づいてきたのは、彼等をどうこうしようというのではなく、もっとシンプルに彼等に可能性を見つけたかったからだろう。自分たちの破滅的な在り様以外に、自分と同類であるミオに希望を見出したかっただけのはず。
ただ、その接触がカズヤに対して予想以上の揺さぶりになってしまったと。
結果訪れた最後の展開は、悲劇としかいいようがない。
中盤までのちょっと若さに欠けるくらいの、カズヤとミオの穏やかで落ち着いた、でもちゃんと熱のこもった恋愛関係が素晴らしかっただけに、この展開は悲劇だよなあ。