Under the Rose (4) 春の賛歌 バースコミックスデラックス

【Under the Rose (4) 春の賛歌】 船戸明里 バースコミックスデラックス


なんつぅ、エグい……。これまでもエグイ話だと思ってたけど、ここまでどん底に叩き込むのか。
ウィリアムによって、尊厳を粉々にすり潰されるレイチェル。
第十話は、ほぼ丸々、レイチェルは一人真っ黒く塗りつぶされたシルエットとして描かれる。それが恐ろしいほどに彼女の絶望を伝えてきて、言葉も出てこない。
これほど凄まじい表現法があったのか。
よくスラムダンクの最終話近く。まったく台詞無しで丸々一話が描かれた話があり、その迫力、表現の凄まじさに未だに話題に上りますけど、正直言ってそれに勝るとも劣らない凄まじさ。
それだけに、彼女が影から姿を取り戻したあの瞬間は、総毛立ちました。
あれほど敬虔な信徒として、なにより女性としての尊厳を粉々に打ち砕かれながら、あのメイドの傷跡を見た瞬間に闇を吹き飛ばし自身を取り戻したレイチェルの姿に、打ちのめされました。
これまで、この女性、あんまり好きじゃなかったんですよね。でも、これを見せられては、そんなこと言ってられない。
だけど、そんな彼女の魂の強さも、ウィリアムの前では薄紙のように破り捨てられる。
何度も、何度も、何度も、何度も。
辛うじて、アイザックやロレンス、自分を慕ってくる子供たちの笑顔や優しさに自分を保つものの、レイチェルの心はボロボロに切り刻まれちぎれ落ちそうになっていく。
もう、見てられないくらいの追い詰められよう。

しかし、アルバートはもう少し危うい人間だと思ってたんだけど……。彼に関しても、なにかその在り様というものが見えてきた気がする。彼は非情かもしれないけど、決して破滅的でも陰惨でもない。ある意味完結しているのが不安なんだけど、彼の守ろうとしているものを破ろうとさえしなければ、彼は味方として、友人として、親愛と信義をもって助けてくれる人なんだろう。
こういう人は結構怖いんだけどねえ。どれだけ親しくしてても、一度敵に回れば徹底的に冷徹に排除してくるだろうし。でも、味方である限りは本当に頼もしいタイプなんだよなあ。

一方のアンナも、彼女は彼女なりに取りつく島があるような気がするんだよなあ。ウィリアムの妨害さえなければ、もう少し歩み寄る要素があるような気がする。本人は過去に縛られているつもりなのかもしれないけど、もう過去を過去として今を生きる準備は、彼女の中には整っているような、そんな素振りは何度か垣間見ているわけですけど……。
なんにせよ、ウィリアムか……。
ライナスがなんか、角が取れてきててちょっとほっとさせられる。
レイチェルも、どん底まで追い落とされたことで、逆に視野や他人への理解の仕方が広がっている風情も見当たるし。
なんとか、事態が好転していかないものか。でないと、さすがに溺れて沈みそう。