狼と香辛料 8 (8) (電撃文庫 は 8-8)

【狼と香辛料 8.対立の町(上)】 支倉凍砂/文倉十 電撃文庫


ホロと巡り逢って以来、着実に商人としてのスキルをアップさせてきたロレンス。海千山千であろう他の商人から見ても、今のロレンスはかなりの出来物、切れ者と目され、相棒であるホロからもこと商売に関してはすっかり信頼されている。
かのエーブとの駆け引きで騙されたのだって、自分にはロレンスの失敗や敗北には見えなかったんですよね。ロレンス本人も、そうは思っていないはず。むしろ、選択としてロレンス本人が敢えて敗北を選んだという自負が感じられる。
それだけに、最近のロレンスには揺るぎない風格みたいなものが見え始めていたんですけど……。
それだけに、今回のロレンスを見舞った窮状の凄まじさは、圧巻の体すらありました。目に見えてロレンスは失態も犯してないし、欲を出したわけでも危険に飛び込んだわけでもない。
それどころか、今回も当初は目的のためにうまく立ち回っていた感すらあるのに……、ふと気がつけば。そう、まさに気がつけばにっちもさっちもいかない立場に追い込まれてしまっていたという。
この危機感、崖っぷちに追い込まれた窮地の空気は、あの先物取引での大失敗を貸してしまった二巻のあれを上回っている気配すらあります。
なにより、今回相手に回してしまったやつがやばすぎる。ロレンスがここまで為すすべなく呑まれた相手って、初めてなんじゃないだろうか。
盛んにエーブは狼に例えられてて、実際エーブの商売人としてのスタイル、たち振る舞いはまさに狼の格を感じさせるものだったのですが、対してあの人物たるやまさに「蛇」。この作品では何度も商人という生き物の恐ろしさを繰り返し語っていますけど、その商人の恐ろしさ、不気味さ、底知れなさを体現したような存在が、満を持して現れたような、この存在感。これは怖いわ。ブルッときました。背筋が震えた。
8巻は、今までにも増して心理的な駆け引きが数的にも多く、質的にも深く、商人同士の腹の探り合いが繰り広げられたような気がします。
それだけに、逆にホロとのイチャイチャ替わりの戯れのような掛けあいが、一種の清涼剤に(笑
しかし、コルはあらゆる意味で便利に使われてたなあww

対立の街、というサブタイトルから連想していた内容とは、やはり一味も二味も違った本作。そりゃ、この作品でわざわざ目に見えるような露骨な対立をしてるわきゃないよなあ。ただそれだけに、破局に傾き始めたときの緊迫感たるやただ事ではなく、上下巻の続きものとしては街の状況にしてもロレンスの置かれた状況にしても凄まじいところで終わっているので、これはあんまり間をおかずに出してほしいところ。待ち遠しいです。