幻想譚グリモアリスI  されど魔刃の名のままに (富士見ファンタジア文庫 187-1)

【幻想譚グリモアリスI されど魔刃の名のままに】 海冬レイジ/松竜 富士見ファンタジア文庫


富士見ミステリー文庫にて、【夜想譚グリモアリス】として出版されていたシリーズが、富士見ファンタジア文庫にて装いも新たに再登場。
って、実はこれ、読むまで富士見ミステリー版の単なる新装版なんじゃないかと疑ってたんですよ。だって、あらすじ見たら、なんか誓護とアコニットが初対面みたいな描写がされてるんですもの。
おかげさまで杞憂だったのですけれど。ええ、しっかり続きものでした。きっぱりきちんと【夜想譚グリモアリス】からの続編。
ということは、富士ミス版読んでないとかなりわからんことになること必定なわけですけどww
それにしても、富士見ミステリーから出版されていた時は曲がりなりにも事件とその謎解きが主人公によって行われてたんですが、ファンタジアに移ったとたんにバッサリその辺、気持ちいくらいに切り捨てましたね(笑
一応、誓護の失われた記憶やら、眠り病事件の犯人など、真相に至るまでの謎追い展開はあるにしても、とても謎解きとはいえない話の流れでしたし。
よく読むと、この一巻のストーリーの前段階では、いつも通り誓護とアコニットによる事件の謎解きが始まっていたことは後々明らかになるんですけど、この一巻の主軸となる事件のおかげでそれらは思いっきり打ちきり状態になってしまうんですよね。これって、いきなり富士ミスから富士見ファンタジアに移籍になった暗喩になってるんでしょうか(笑

ともあれ、今回はいつにも増してアコニット祭り!!
序盤、展開の都合もあってアコニットほとんど出番がないにも関わらず、破壊力については今までの倍プッシュ。
幻想譚グリモアリスとして再開されたこの作品において、アコニットは尋常でない窮地に立たされてしまうのですが、そうなったときにこのお姫様が真っ先にやったのが、誓護といのりの身の安全の確保。自分の置かれた立場がどれほど拙いことになったのか嫌というほど理解しながら、絶望と恐怖に叩き込まれながら、パニックに陥り取り乱した彼女が無意識に助けを求め逃げ込んだのが誓護の元だというのに、彼女がやったのはみずからを助けることではなく、誓護といのりが自分の災禍に巻き込まれないように遠ざけること。
人間、追い詰められた時こそ本性が剥き出しになるといいますが(私はそうは思わないんですけど)、普段高慢な態度を崩さず、偉そうにふんぞりかえって我儘言ってる彼女が、家柄も立場もプライドも、彼女が大事に守ってきたもの全部が失われた時に示した素裸の気持ちが、無性に胸にきました。
この娘、ほんとにイイ子だ(涙
なによりガツンと来たのが、誓護の妹のいのりが危険な目に遭わされた時にマジ切れしたところですか。前からそれとなく描写されてましたけど、アコニット、誓護だけじゃなくて、いのりのこともかなり大事にしてるんですよね。誓護のこと、好きなのは言動から丸わかりなんですが(本人が認識してるかは不明ですけど)、妹のいのりのことに対してもあれほど激情をあらわにするあたり、ヒロインとしてかなり好感度株ストップ高なのですよww
さすがに追い詰められてるだけあって、今回のアコニットは傲岸不遜の裏に隠れてた本来の気の弱さがかなり露呈していて、いざ誓護が主人公らしく彼女の前に現れたとき、もうかなりの勢いでツンデレのデレ状態入っています。誓護は誓護で、いい加減気障ったらしすぎるだろう、と苦笑してしまうくらいに姫の騎士っぷり。
正直、ここまで行くと完敗です。兄ちゃん、あんたカッコいいよ。
泣いておびえて震えているお姫様を守る騎士として、これはもう満点に近いです。
唯一の瑕疵は、お前そこまで言っておいて「友達」はないだろうってことぐらいですか。
それさえなければ、ほぼ完璧な姫に愛を捧げる騎士の誓いだったのにww

おかげさまで、本来のアコニットの騎士というべき衛士である軋軋のカッコよさがくすんじゃってるじゃないですか、というのは言い過ぎか。
軋軋は軋軋で、今回も株あげっぱなしだもんなあ。誓護の存在がなかったら、軋軋が主人公でアコニットがヒロインであってもそうおかしな話にならないくらいに。とはいえ、アコニットと軋軋の間に恋愛感情の介在する節は一切ないんですけど。だからこそ、軋軋の蓮っ葉な忠節が際立つんでしょうが。
誓護との妙な信頼関係というか友情めいた絆も見えて、なんか良かったです。良かったです。

富士見ファンタジア文庫に移籍したことで、大きくファンタジー路線に舵を切ったグリモアリスシリーズ。印象としては、今までのミステリー調も好きだったんですが、この路線変更はかなりいいんじゃないでしょうか。
アコニットを襲った突然の災禍に、冥府に渦巻く陰謀の影、そして誓護の手に渡った魔書とエンデの同胞、マギステルの名。
くくくっ、きましたきました、ビリビリキました。盛り上がるには十分な種火が注ぎ込まれましたよ。面白くなってきた。
さらにアコニットと誓護の直接的な絡みも(つまりはイチャイチャ)増えそうな感じで、さらに次巻が楽しみです。