オイレンシュピーゲル肆  Wag The Dog (角川スニーカー文庫 200-4)

【オイレンシュピーゲル 肆 Wag The Dog】 冲方丁/白亜右月 角川スニーカー文庫


前から考えてたんですけど、今回のエピソードを読んで改めて思ったのが、陽炎のこと。一度、彼女を徹底的に外から観てみたい。陽炎って外面と中身に大変なギャップがあるキャラクターとして描かれているんですが…ええ、実はけっこうヤンデレ入ってる鉄壁のツンデレ(自覚型不器用大系)なのですけど、普通のこの手のキャラクターの描き方と反対に、陽炎は徹底して内面から描かれてるんですよね。中身のちょっと変態入ったグデグデグダグダデロデロな面がだだ漏れ状態なわけですよ。
そういう内面がまったく見えない状態で彼女を外側から観たとき、陽炎ってどんなキャラクターになるんだろうかと想像してしまうわけです。彼女がどんな外面を作ってるかはちゃんと描写されてるんですけど、なにしろ陽炎本人の内面というフィルターを通しているので、いわゆる第三者から実際にはどう見えてるかがはっきりわかんない。今回に関しては涼月も別行動だから、彼女の眼から見た陽炎の姿も捉えられてないわけだし……。
今回、余計にそんな思いを抱いたのは、やっぱりこれまで以上に陽炎の生々しい激情を目の当たりにしたからだろうか。色々と思い悩む思索を吹き飛ばすくらいの瞬間的直截的な感情の激発。複雑で婉曲でうねうねとねじ曲がった内面をいつももてあまし、もてあそんでいる感のある陽炎ですけど、自分で毛布を頭からかぶるみたいにしているそうした様々な付随物が吹き飛んだ時に剥き出しになったのは、思ってみないほどの年相応の幼い脆くも純真な少女らしい心の在り様。
……うん、なるほど。どうやら自分が見たいと思ったのは、ミハエル中隊長から観た陽炎みたいだ。普段、彼がいったいどういった目で彼女を捉え、認識しているのか。きっと、陽炎本人が一番知りたいであろうことを、読者である自分も知りたいと思ったのだろう。それくらいに、今回の陽炎は色々な顔を垣間見せ、ミハエルもどう捉えるべきか考え込まされる陽炎に対する対応を見せられてしまったので。

今回の導き手。パトリックは、スプライトのあちらと違ってかなり強引。おそらく、立ち位置の違い、所属している組織と与えられた役割からくる力強さなんだろうけど。その強引さは癇に障ると同時にとてつもなく頼もしいんですよね。スプライトのハロルド・レイバース捜査官とこちらのパトリック。この二人は、なんかまさしく<アメリカ>の良い面そのものとして描かれてたんじゃないだろうか、とふと思ってしまった。
ハロルドとパトリックの進む道を決定づけた件の事件。あの事件なんか見せられると、あの国ってどうしようもなく憎たらしくって腹立たしい思いをさせられることがあると同時に、なんかこう、眩しくて仕方なくなることもある、一種の敬意を抱かざるを得ない国であることを、改めて思い知らされるんですよね。
複雑なんだよなあ。

さて、今回メインもメインだった涼月ちゃん。なんだかんだとよく読むと、スプライトも含めて、彼女が一番メンタル的に素朴に女の子してるんですよね。粗野で野蛮で乱暴な外面と違って、中身は臆病で自分に自信がなくて気が弱い、生真面目な女の子。
その辺、かなり意識して描かれている感があります。それこそ、スプライトの鳳よりも明確に。鳳とは、物語に対しての主題が違うんでしょうけど。
意外と強引な男に弱いのも、今回発覚(笑
いやいや、そういえば吹雪くんも、気弱でなよなよしてるわりに、いざというとき強引で有無を言わさないところがありますからなあ(ニヤニヤ