ダブルブリッド (10) (電撃文庫 (1588))

【ダブルブリッドX】 中村恵里加/たけひと 電撃文庫


終わったなあ。終わった。感慨もなにもかも擦り切れて、ただほんの少しの哀しさと寂莫を胸に浮かびあがらせながら、終わりを噛み締める。
四年半振りの最新刊にして最終巻。この作品が確かに電撃文庫というレーベルの躍動の一角を担っていた時代がふとよぎって、なんだか懐かしさを覚えてしまう。それと同時に、それがこうして幕を下ろしたことに寂しさを。
四年半という空白があったからだろうか。時間を跨ぎ越したように、あの頃の残り香が強烈に鼻孔を擽り、そして消えていったようだった。
なにか、妙に切ない読後感。

作者はこれをハッピーエンドだという。そうなのだろう。これは、どうしようもないハッピーエンドだ。時に、物語を創造する者はこうした結末を以ってしか幸福な終焉を導くことが出来なくなる。その定義は常なら幸福とは程遠いものなのかもしれないが、まぎれもなくその物語においてはハッピーエンド以外の何物でもない。
はたして、そこに後悔は秘められているんだろうか。別のとある物語では、一切の疑問も後ろめたさもないまっすぐな確信が感じられたものだが、このダブルブリッドではどうだっただろう。
これは私感にすぎないが9巻までにはなかったある種の揺らぎのようなものが、この最終巻には感じられた。
この結末に至るより他なかった彼女たちへの、哀切のようなものが。
千堂の心情。飯田の願い。太田の苦渋。浦木の慟哭。
彼ら見送るものたちの哀しみに、それを透かし見るのは穿ち過ぎだろうか。
どちらにせよ、この終幕は変わることなく、ただ最善を尽くして生き抜いた彼女と彼の結末が、彼らにとっての最良であったことに、良かったなあという感慨と、漠とした哀しみにたゆたうのみである。
そして、過ぎ去っていったものはもう、遠い。