ある夏のお見合いと、あるいは空を泳ぐアネモイと。 (一迅社文庫 し 2-1)

【ある夏のお見合いと、あるいは空を泳ぐアネモイと。】 朱門優/鍋島テツヒロ 一迅社文庫


やはり、というかなんというか。エロゲのシナリオライターの人はスッ惚けた会話や掛けあいがやたらと面白いなあ。この辺、センスと練達のブレンドがよく効いた感じがして、素直にケラケラと笑えると同時に腹に溜まる満足感の両方をいっぺんに味わえて、非常に心地よかった。
特に細緻な描写があるわけじゃないんだけど、田舎の街のノスタルジックな雰囲気が行間からふわふわと立ち上って薫ってるんですよね。ゆるゆると流れる時間。主人公といちことアネモイ、三人のどちらかというとせわしないドタバタとした騒がしさとは裏腹に、どこか深とした静けさに包まれたような空気。
最後に、この物語の舞台となる十五夜草町の正体がわかって、この空気や時間の流れの理由がわかった気がします。
そうかぁ。たとえば、神社の境内なんかでどれだけ子供たちが大騒ぎしていても、賑やかさの傍らに静寂が澄まして鎮座しているのとおんなじ理由だったわけか。

途中からの展開の早さは、これもいつも書いてる分量をコンパクト化することになるシナリオライター共通のサガなのか、いささかバタバタしてる感も否めないのですが、それ以上にアネモイの最初から最後までブレずに一貫して一途に自分の役割と想いを矛盾させずに果たしていく強い優しさに、胸を貫かれました。

それにしても、アネモイといちこの掛けあいは面白かったなあ(笑
すっとぼけて、何考えてるかさっぱりわからないアネモイと、それに振り回されるリンやいちこのやりとりなんだけど、これが意外にのちのち重要な伏線や意味が込められてたりするので、侮れない。けっこう、ストーリー的にも密度の濃い内容だったりするんですよね。
それでいて、頭空っぽにして表層だけ浚っても、これがやたらと面白い。笑える。アネモイ、最高でした(w