かむなぎ 五 君みずやそのそら花の散華のときを (GA文庫 お 4-5)

【かむなぎ 五 君みずやそのそら花の散華のときを】 沖垣淳/睦月ムンク GA文庫


真幸、今お前は怒っていい、怒っていいんだ!!
主人公シーンの大激怒シーンに、読んでたあっしもユニゾンシンクロ大激怒! うごぁぁぁ! 貴様ら、このくそ外道ども、千尋になにしやがるだっ!!
いやもう、こんなに主人公と気持ちがシンクロしたのは久しぶり。というか、そんなんじゃ物足りないわ、もっとやれ。もっと思い知らせてやれ。やつらは、それだけのことをしたんだから。ああ、もうめちゃくちゃ腹が立つ。
さらに頭に来るのが、こんなひどい事をしたのが敵さんの方じゃなく、本来ならば千尋を守るべき人たちだというところ。あんな小さくて幼くてあどけなくて素直で優しくてイイ子に、なんちゅうひどい事を、なんちゅうひどい事を。怒髪天!!
こんな環境に置かれていた千尋が、こんな素直で純真で愛らしい子に育ったのは本当に奇跡的。真幸の言う通り、霊異たちが傍で見守ってくれていたお蔭なんだろうけど、周囲の人間からあんな風に扱われて、心が歪まずに済んだことが信じられないくらい。
第一巻で、他人に対して感情を見せようとせず、関わりを避けようとしていた態度も無理からんことだったのだと、故郷での彼女の境遇を知り納得。常に忌避され、御愛想の笑顔を向けられることすらなく、穢れた存在として、忌まわしい者として扱われる。まだ十歳にもならない幼子が、自分が愛されることを、幸せになることを許されないことだと思い定めて生きようとするなんて。
改めて、彼女が草薙の家に預けられたことがどれほど幸いな事だったのか思い知らされる。この家にきて、一族のくびきから外の世界に出て、草薙の家族から、八多の姉妹から、本来何のかかわりもない人々から、目一杯愛されて、過剰なくらいの愛情を与えられ、子供らしい笑顔を取り戻したことが、彼女の境遇を知ることで、なんだか嬉しくてたまらない。
もう、みんな千尋の愛らしさにメロメロで、そのだだ甘っぷりはダメ人間に近いんだけど、仕方無いんだよ。千尋のかわいらしさは異常だもの。常軌を逸した可愛さだもの。
千尋は、それだけ愛されるに相応しい子供なのだと断言できる。
千尋かわいいよ千尋。
紅の紫や、円環少女のメイベルなど、ライトノベル界を席巻するロリはいらっしゃいますが、私の中ではぶっちぎりにぶっちぎりに千尋が一番でございますよ。

主人公の真幸の、千尋への兄バカっぷりももうアホか、というくらいなんだけど、仕方無い。千尋が相手じゃ仕方無いよww
ちょっと新鮮なのは、彼の千尋への感情と言うのはもうまっすぐにお兄ちゃんのそれ、なんですよね。異性に対してのそれではなく。そりゃ、まだ十歳にもならない幼子に対しては当たり前と言えば当たり前なのですが。でも、このまま成長しても、千尋への彼の感情ってのは兄のもののまま変わりそうにない感じもする。将来、千尋が年頃になって恋人を連れてきても、激怒して大騒ぎして相手に対して喧嘩腰になっても、最終的においおい号泣しながら、千尋は任せたぞー、みたいに叫んで赦すみたいなそんな感じで(w
まあ、むしろ千尋の方が、恋愛の機微を理解できる年頃になったときに、この優しくて頼もしくて何より自分を理解し愛おしんでくれる兄のような青年に対して恋心を抱きそうなものですが。

可愛いと言えば、前回初登場(でしたっけ?)だった、貞之の式神の金雀と百目の少女型も、今回も愛いかったなあ。何気に、この沖垣淳さん、ちっちゃい子を可愛らしく書くの、尋常じゃなくお上手です。純真な千尋、元気一杯の金雀、恥ずかしがり屋の百目と、それぞれ魅力も違いますし。金雀と百目の貞之への懐きっぷりが、眼に痛いです。
この作品、ちゃんと相手方の男連中が、彼女たちが向けてくる愛情に、それ以上の慈しみ、愛情を持って返しているところが気持ちいいんですよね。だだ甘? いやいや、愛情というのはこれくらいの濃度で交わし合うのが相応しいものなんじゃないでしょうか、本来。

千尋が可愛いだけの作品ではなく、伝奇モノとしての空気もなかなかに素晴らしいんですよね。
自然や被造物にまで神の存在を意識する、八百万の神々の息吹を感じるような、日本と言う国の清涼で透明な、それでいて深遠な澄んだ空気の感覚。
そして、死んでなお今へと残る、古の人々の一途な想い。
今回の事件の敵となった相手も、そうした一途な想いに自分を貫いた一人であり、最後にああした形ではあっても、主人公たちとお互いに理解し合い、自分の想いに一つの決着をつけ、清々しい思いで去っていけたのは、良かったなあ。
霊異っていいよなあ、という真幸の言葉に、とても共感させられた。

このシリーズ、これで完結なのか。貞之たちの方もキャラ立ってたし、千尋は相変わらず可愛いしで、続けようと思えば続けられるのだろうけど、一応シリーズの裏で進行していた敵側の企みも、今回決着ついたし、仕方無いと言えば仕方ないんだろうけど。いやもう、いっそ貞之主人公でもう一本別シリーズ作ってくれたら嬉しいんだけど。金雀や百目なら十分メインヒロインとしてやってけるだろうし。八多の姉さんたちがいればいくらでも貞之たちを面倒な事態に巻き込んでくれるだろうし(笑
とはいえ、この作者の別シリーズというのも読んでみたいし。
うん、次の本を出してくれるならなんでもいいや。

ああ、それにしても千尋かわいいよ、千尋。