BLACK BLOOD BROTHERS9  ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 黒蛇接近― (富士見ファンタジア文庫 96-15)

【BLACK BLOOD BROTHERS 9.黒蛇接近】 あざの耕平/草河遊也 富士見ファンタジア文庫


ミミコの発した願いは、波紋となって世界に広がり、そして今、津波となって帰ってくる。
読む前から最高傑作と分かり切っていて、それでも読んだらやっぱり最高傑作で、これはもう悦楽に死すってな感じでありンス。
そう、これぞ歴史の転換点。夜の世界をも揺り動かした激動の二十世紀を経て、今まさに新たな世界が訪れる。
今回はルイのおっちゃんの晴れ舞台ってな感じで、一本通して大活躍でした。いや、特に体を動かしたわけじゃなくって会議でふんぞり返ってるだけだったんですけど、その存在感、聡明さ、稚気に老獪さ、すべてが古老に相応しい大きさで、同時にどこかしら以前よりも若々しい覇気があって、なんだか眩しかったなあ。ライバルともいえるドイツの古血を失った後の短編での彼は、なんだか意気消沈、溌剌としたものを失ってしまったような感じだったので、今回の覇気と威厳あふれる姿にはなんだか嬉しく思ってしまう。別に、特に好きなキャラってわけじゃなかったんだけど、ミミコへの惚れこみっぷりといい、昔、オルレアンの聖女のもとにはせ参じたことがあったという過去といい、けっこうやんちゃな人だったんですわねww
特区では、サユカさんが色々な意味で成長(苦笑
いやいや、もうね、そっち関係思いっきり初心でド素人のくせに、変に真似するからそんなことになるんですよ。中身がまったく伴っていないだけに、完全に自業自得。ハッキリ言って打開策はありません。この、土壇場で暴走するのって、サユカもミミコと似た者同士なところあるよなあ(笑
と、キャラ立ての方はともかくとして、戦闘能力の方はゼルマンの血の導きと、謎の(笑)ぬいぐるみの的確な指導で、転化したてとは思えない、まさに闘将アスラの血族に相応しい実力を急速に蓄えていくサユカ。こりゃ、ミミコ側でもケインと並ぶ実力者として立つことになるんじゃなかろうか。もともと人間で、ミミコとは短い付き合いながらも親友とも呼べる深い付き合いを交わした間柄。頼もしいったらありゃしない。

ミミコはミミコで、立ち場と状況からかつての彼女とは別人のように振る舞い、周囲の人々と同じようにその殉教者のような姿勢には不安にさせられたものの、やっぱり根本的なところではまったく変わってないミミコそのものの姿が、後々観れることになって、なんかもうめちゃくちゃ安心した。でも、こんな時に傍にいないジローさんは万死に値すると思います。そうだ、自分のふがいなさに泣け、泣いて自戒しろ。ジローさんは、結局情けないくらいで丁度いいのですww
でも、その彼も最後にはやらかしてくれるんですけどね。もう、最高でした。これはまさに、あの場では彼にしかできない<調停>。古き血族たちの凝り固まった心を、一瞬にして打ち抜き吹き払った想いの力。
欧州だけでない、まさに世界中の吸血鬼たちを突き動かし、月下と真昼の世界を繋げることになる大会議の模様。
もう、大興奮。大高揚。素晴らしかった。最高でした。
そして、ミミコが見る、受け取る、吸血鬼たちの答え。

泣きそう。

カーサと、モーガンの魔女の血統の三姉妹の因縁。図らずも直接の対決となった彼女らの因縁は、想像以上に複雑で、当人たちにとっても消化し難いものだったんだなあ。
アンヌは、果たして本当はカーサのことをどう思っていたんだろう。決して、カーサが思い込んでいたようなものではなかったんだろうけど、でも決してうまい接し方ではなかったのも確か。カーサが長らくどれだけ苦しみ、心を傷つけてきたかはわからないはずないだろうに。お互いに、理解が足らないことを承知しながら、歩み寄れなかったのは悲劇だ。
ただ、カーサが裏切り、九龍の血統が香港聖戦を引き起こしたのは、なんらかの理由があったらしいことが、二人の断片的な会話、そしてワインへのラストのアダムの告白からも明らかに。
ワインの件には虚を突かれたけど、そうだよなあ。良く考えたらおかしいと思える要因は山ほどあったといえる。
真相を悟ったアンヌが、カーサを哀しく、誇り高い子と讃えたからには、本当に何かどうしようもない理由があったということか。

九龍の血統がどうなるかは、わからないんだけど、彼らも決して悪というわけじゃないんですよね。九兄弟はみんな個々を見るならむしろイイ連中ばかりで、だからこそただ滅ぼされるだけでは済まないなにかを秘めている。
ミミコが抱く理想に、九龍の血統という存在はどんな居場所を得るのか。
残り僅かとなった赤き血と黒き血の物語。ただただひたすらに楽しみでしかない。心がときめき、高なり、弾けそうである。

ああ、尾根崎社長の格好よさはストップ高。大丈夫だ、あんた、陣内の代わりに十分ミミコの保護者役を果たしてるよ!