花園のエミリー―鉄球姫エミリー第三幕 (集英社スーパーダッシュ文庫 や 2-3)

【花園のエミリー 鉄球姫エミリー第三幕】 八薙玉造/瀬之本久史 スーパーダッシュ文庫


うわぁ……これはむごい。むごすぎる。
ざっくり心に突き刺さり、容赦なく希望だとか明るい未来というものを挽き肉のようにすり潰す、そんなむごたらしさ。
あの王宮での宣誓シーンで、てっきり路線変更、王道ともいうべき華々しいファンタジー戦記モノにスライドするのかと思ったのに……この揺るぎなさ、この作品に対する作者のスタンスの一貫性には頭がさがる。屈服させられる。
まいった。
アクションにおける肉体破壊描写の惨たらしさもさることながら、この作家の妙たるは、やはり人の想いをぐちゃぐちゃに踏みにじる物語としての惨たらしさなんだよなあ。それも、どちらかというと悪意によってもたらされるものではなく、人がそれぞれ抱く信念、良かれと思い悪行と分かってなお断行するその揺るぎない想いこそが、他の人の想いを踏み躙り、徹底的に破壊する、その無情さがなにより惨たらしく胸を掻き毟る。

正直、一巻ではその圧倒的な勢い、秘められたパワー、ドライブの効いたキャラクター描写などに比べて、作品そのものの方向性というか芯のようなものが見えず、物語というより展開描写に過ぎないような、中身のすっぽ抜けた印象が強く、二巻は物語としての骨格こそ通ったものの、逆に一巻にあったパワーや勢いが消え失せて、ややも先の野性的な魅力を減じてしまってがっかりしてたんですが、この三巻の発展ぶりにはおおっ、と目を見張らせられましたよ。
一巻・二巻でそれぞれ物足りないと感じていた部分が補填され、あのビリビリと感電するような圧力こそまだ一巻のそれに至っていないものの、非常に高い位置で足場が固まり、安定した感がこの巻の随所から見受けられました。
そして、ラストの急展開。エミリーの真骨頂ともいうべき…無常の惨劇。
あのまま、作品性の方向転換を図ってもまったく問題ないように思われるほど華々しく、眩しく、充実した展開だったからこそ、それを容赦なく粉々に打ち砕く破砕の威力は凄まじかった。
このエミリーシリーズ、ぶっちゃけあんまり期待してなかったんですが、ごめんなさい、大間違いでした。三巻で完全に脱皮にしてのけました、これ。素晴らしい。間違いなく、スーパーダッシュでのこれからの注目作品です。