プリンセスハーツ 乙女の涙は最強の武器!の巻 (小学館ルルル文庫 た 1-4)

【プリンセスハーツ 乙女の涙は最強の武器!の巻】 高殿円/香代乃 小学館ルルル文庫



くわぁぁぁっ、キタ、キタキタキタ、これはキタ!

MARVELOUS!!

産休明けで育児も大変でしょうに、高殿先生、完全にギア入ってきました、これは。何気にルルル文庫最厚をぶっちぎったらしいし。
実に、実に読み応えのある政争劇!!

いやはや、今回のルシード陛下の成長ぶりには目を見張りましたよ。この野郎、王様で主人公格だというのに、これまでいわゆる<脳筋>でかなり頭使う作業についてはダメダメだったんですよね。
光栄シミュレーションゲームの数値でいうなら武力80以上、知力政治力30〜40、みたいなww
かといって人間的魅力にあふれてて、自然と他人を惹きつける君臨するタイプかというとそうでもなく、コンプレックスが強く野心家で、色々と心にひずみを抱えて容易に他人に心を開かない、わりと屈折したタイプなんですよね。
そのせいもあってか、味方がとにかくいない。政略的味方はそりゃいますけど、いざって時に心から信頼して頼りにできる相手がいない。
その数少ない仲間が、王妃であるジルと秘書官のマシアスだったわけですけど、当初はこの二人だってお互いの目的のためにお互いを利用し合うドライな関係だったわけです。
おまけに、男としても未熟者でジルに対しても何度も心無い言葉を投げつける始末(まあ、ジルと結婚するにいたった過程や関係、お互いの性格を鑑みるに仕方ない部分はあるんですが)。このルシードの女性に対する接し方の歪さは、今回さらりとジルが分析してたりしますけどww

そういう、わりと武張った不器用な王様だったルシードなのですが、ジルが感慨深く思うように、彼は今回の一件を通じて確かに草原の民を束ねる族長から、近代国家の国主として発想、着眼点、行動力の方向、我慢強さに腹芸と、べろりと一皮剥けた感があります。
政治の相談役であり知恵袋であるジルが、傍にいないという緊急事態であり、すべて彼が判断しなければならなかった、という状況があったにしろ、今回はルシード、ほんとに必死で頭使ってたもんなあ。
ただ、それが単にジルに頼れなかった状況が導きだしたものではなく、ジルを助けるため、さらにはジルを危険にさらし国家の危機を招いてしまった自分の王としての不甲斐なさへの憤りからきた覚醒だったのは、なんとも感慨深い。
これって、ジルが不要というのではなく、ジルが自分にとってかけがえのない存在だという思いが引き出したようなパワーだったわけでして。

しかし、クライマックスの緊迫感あふれる政争劇は二重三重に仕掛けられた罠といい、ギリギリの綱渡りの駆け引きといい、素晴らしかった。剣と剣のファンタジーも面白いけど、こういう歯応えのある政略戦・謀略戦、情報戦、頭脳と知略と機転がカチ遭い攻防優劣が二転三転する戦いも面白いったらありゃしない。
とはいえ、なかなかここまでガッチリ政争を書ける人はいないので、今回は大変満足でした。数ある高殿作品の中でも今回は屈指の攻防だったんではないでしょうか。
一方でルシードとジルを中心とする恋愛模様も今回のジルの危機を機会に一気にガツガツ進展したみたいだし。ルシード、あの言動を見る限りもうジルのこと十分意識してしまってるようですし。むしろ、恋愛感情への自覚のなさからいったらジルの方が遥かに鈍チンなのかも。
なんだよ、管理って!! (爆笑
ルシードずっこけるのも無理ないですよ。なに勝手に自分の感情理解した気になってスッキリしてるんですか!!
コイツ、ひどい女だ(笑

でも、この二人の関係が進展すればするほど、二人の間に前提として横たわっている爆弾が、威力を増していくんですよね。
元々は偽の夫婦。愛する女性の偽物として送り込まれてきたジルと愛情を育むことは、やがて本当の姫・メリルローズが登場することで個人間の関係も国家の政治体制にとっても致命的な爆弾として作用するわけで。
真打ち登場、メリルローズ……この人、なんか物凄くこえぇぇぇ!