ベン・トー 2 (2) (集英社スーパーダッシュ文庫 あ 9-4)
ベン・トー 2 (2) (集英社スーパーダッシュ文庫 あ 9-4)

【ベン・トー2 ザンギ弁当295円】 アサウラ/柴乃櫂人 スーパーダッシュ文庫


これを読み終わった後に食べた昼飯がめちゃくちゃ美味かった件について。
いやいや、単なるインスタントラーメンだったのですけどね。この作品の涎垂らしてしまいそうな美味そうな弁当の描写を読まされたあとのこの空腹感こそ、最高のスパイスでございました。
いやもう、めちゃくちゃ「食った―! 食べたー! 美味かったー!」という気分でこの上ない満足感に浸れました。
実はこの【ベン・トー2】、購入直後に途中まで読んで、そのまま置いてたんですよね。たまたま、夕食直後の満腹時に読み始めてしまったものだから。置いておいて大正解でした。どんな美味の料理だって、腹が一杯のときに食べるのと、空っ腹の時に食べるのとでは美味さの桁が違います。
この本を読む際には、食前がお勧めです(笑

さて、メインヒロインの登場である。
反論は馬耳東風。
【湖の麗人】の二つ名をもつ狼、洋の従姉である著莪あやめの、この現れた瞬間から文字通り蹂躙するがごとくヒロインの座を掻っ攫っていったこのキャラクターの存在感たるや、なんたることか。
というか、正直私が参った。もうメロメロである。私の幼馴染属性をザックザックと切り刻む、久々のキラー幼馴染。
いわゆる我儘や傍若無人な自分勝手な振る舞いで相手の男の子をその意志を無視して振り回して引っ張り回すタイプの幼馴染なわけですけど、この娘が凶悪なのは、相手に対しての乱暴な振る舞いが完全な信頼に基づいているところである。言ってみれば、我が儘言うことで甘えてるんですよね。
槍水先輩に敗北した直後の、洋への八つ当たりなんて、顕著にその甘えが滲み出てる。あんな理不尽な言い分、八つ当たり以外の何物でもないはずなんだけど、ただ当たり散らすんじゃなくて、ちゃんと理不尽な要求を受けるか否かを相手に預けてるわけです。これってズルいやり方なんだけど、けっこうリスク高いんですよね。万が一、洋が拒否した場合二人の関係にひびが入る可能性がある。あやめは、その辺のリスクちゃんと理解してるっぽくて、この時なんか無茶苦茶言いながら、内心ちょっとビビリながら洋の反応をうかがってる節がある。
というか、確認している、というべきか。
本人にとっても、そういう手法が何を意味してるかはわかってないっぽいけどね。あくまで、今までの二人の間の関係の繋ぎ方、という認識でしかないんだろうけど。その意味では、あやめの洋との関係に対するメンタリティは純然たる子供のままなのかもしれない。洋の扱いとか、彼の部屋に転がり込んで徹夜でゲームに明けくれたりとか、子供のころの延長みたいなところがあるし。
ただ、あやめが洋のことを男として全く意識していないかと言うと、はたしてそうでもなさそうなんですよね。洋とのコミュニケーションに性的なアピールや接触を欠かさず、自分の女性を常にアピールしているし。その割には、自分を女として意識してほしいという類いの気持ちは一切見当たらないわけですけど。
つまり何が言いたいかと言うと(ぐだぐだになってきて何言ってるのか自分でもわからなくなってきたので仕切り直して)、この恋人とか異性関係を通り越した家族そのもののような距離間が素晴らしい、ということですよ!
尋常でないほど野放図に気を許し、どんなことをしても、何をしても関係が崩れるはずがないという信頼感。
まあ、その関係性の甘えゆえに、この作品におけるあやめの当初の迷走振りがあるんでしょうけど。
うむむ、そう考えるとこの二巻って、あやめの成長物語でもあるのか? 成長とはちょっと違う気もするけど、自意識の成長と言う意味では合ってると思うし。
なにしろ、主人公の洋はあれだしなあ(笑
でも、洋がアレなバカであるからこそ、あやめみたいな子と致命的な衝突もなく関係が続いてこれたんだろうけど。そうか。ある意味、洋ってめちゃめちゃあやめのこと甘やかしてるのか、これww
ラストの膝枕の構図なんて、二人の関係そのものみたいだし。

PS.白粉って何気に弁当取得率百パーセント?

あと、槍水先輩の二つ名【氷結の魔女】の由来も酷かったけど、あやめの【湖の麗人】も何気に酷いな(笑
このままいくと、洋も二つ名を得そうな勢いだけど……なんか二つ名がつく過程がとてつもなく酷いことになりそうな予感を覚えるのは私だけではあるまいww

ザンギ弁当、食べてみてぇ。

あやめのことばかり語っているが、この物語はいわゆる男の哀切の物語でもある。この物語のもう一人の主人公は、ガブリエルラチェットの彼であろう。愛に敗れ、道を誤っていると知りながら愛の残骸に縋り、だが漢同士の戦いの中で狼の魂を取り戻し、かつて愛を抱いた相手の腕の中でかつての愛に別れを告げる。
ひとりの男の、哀切の物語である。