ゼペットの娘たち (電撃文庫 み 11-3)

【ゼペットの娘たち】 三木遊泳/宮田筝治 電撃文庫



MARVELOUS!!

これは素晴らしかった。前作【カレイドスコープのむこうがわ】からけっこう空きましたけど、確実に上手くなってるなあ。見せるべき世界観の骨密度が違いますよ、骨密度が(?)

主人公(?)のサツキ・クガの生活力の皆無さが素晴らしい(笑
天才的な機鋼人形師としての腕前を有しながらも、天才とか芸術家にありがちな自分の興味あること以外の事柄に関しては完膚なきまでに無能。世間知らずで他人とのコミュニケーションの取り方も知らないし根っこのところで知る気もない。こだわる部分は絶対譲らない偏屈で意固地。とくると面倒くさそうな輩なのですが、基本的に善人で素直な人物でそうした性格が倦厭されるものではなく、どちらかというと愛嬌となってわりと好かれるタイプなんじゃないでしょうか。
相棒ともいうべき犬型機鋼人形のトルネードが、サツキのどうしようもない世渡り対人無能力に対して上手くサポート役になってる感がある。本人、能天気で楽天家で知ったかぶりのお喋り者なんだけど、これでサツキよりもよほど世の中の機微ってやつをわきまえてるしなあ。なんで、製作者があれで、被製作物の方がああもこまっしゃくれてるんだろう(笑
でも、トルネードかわいいよトルネード。性格と言い決めるとこキメながら最後までキマらない惚けっぷりとか、毛並みとか毛並みとか。
物語的にもかなり重要な立ち位置なんですよね、彼。サツキはあんなだし、ハリケーンは産まれたてで経験は赤子そのものの純心無垢。トルネードがいないと物語の雰囲気的にももうちょっと煮詰まったような息の重いものになっていたかもしれない。なにしろ、サツキの境遇ときたら借金抱えて街に出てきたものの、やることなすこと上手くいかずに行き詰まり、ってなもんだし。でも、トルネードの弾けたような明るさが折々で場を盛り上げてくれるので、要らない重苦しさはいっさい感じさせずに、ほのぼのと温かいハートフルな空気の流れを最後まで保ってくれた感がある。
ありがたやトルネード。一家に一台トルネード。

物語のヒロインはハリケーンとニコのダブル制かしらこれ。
男装しているヒロインってのは珍しくないけど、これ本気で一見女性には見えんなあw
いや、イラストの宮田さん上手いです。ちゃんと青年風のだけどよく見るとなんか男とは違うなあ、というデザインになってる。作中でサツキが男と間違うのは彼が人を見る目がないだけとは言い難い。
とはいえ、挙動言動をよく見てると、ポロっと女の子らしい仕草が出てくるんですよね。
この辺の、女性に厳しい業界ゆえに男装して舐められないようにしている腕利きの女性技術者、という彼女の側面が上手いこと表現されてて、かなり絶妙な描写がなされているんじゃないでしょうか、彼女のキャラクター。

うん、なんにせよ素晴らしく面白かった。【カレイドスコープのむこうがわ】を読んだ時に感じたこの作者の良いところを、より洗練させながらなおかつ作品全体のクオリティ、完成度を高くして器自体も整えて仕上げてきたって感じ。
人と変わらぬ心を持つに至った機鋼人形たちの成長物語としても好感のもてる作りになってるし、脇を固めるパトロンの変人アレックスにジンク、エリカの兄妹、協会の受付メリーさん、仕入れ屋のランディと、それぞれ得難い存在感を放ってて、世界観に厚みと彩りを与えている。
特に、アレックスは凄いなあ(笑
この人は本気で変。お脳に花畑が咲き誇ってるに違いない類いの変人。これで、抜け目のない実業家なんだから恐ろしいw
最後の、「お祝い」は、酷いよなあ、あれ。最悪だ(笑
まあ、その前のサツキのニコに対する「おねがい」も、これに増して酷いんだが(笑
機鋼人形バカもあそこまで行くと、幸せだよねえ(苦笑