ライタークロイス4 (富士見ファンタジア文庫 170-5)

【ライタークロイス 4】 川口士/柴倉乃杏 富士見ファンタジア文庫


突如審らかにされた皇女ファリアにまつわる真実には、仰天。いやいや、これはまったく想像だにしていなかった。
良く考えたら、ファリアがずっと公式には病弱を装ってる理由って、理由としては弱かったんですよね。そうか、これは逆の発想をするべきだったのか。
しかし、これが真実とするとファリアの兄貴への微妙に苦手っぽそうな対応も、単純にあの性格が苦手というわけじゃなかったんだなあ。ただ、ハイラム兄ちゃんとしたらあれで、ファリアのこと、彼女個人を十分可愛がってるし大事にしてるように見えるんだけど。

主人公のカインは、何度も作中でいろんな人物に評されてるように、同世代の中では槍の技量は飛びぬけてるけど傑出しているわけでもなく、性格的にも朴訥な正義感の持ち主というだけで凡庸のくくりの中にしまわれてしまうような、そんな普通の青年なんですよね。頭が冴えてるというわけでもない。
それでも、この子は主人公として、三巻あたりから無視できない輝きを帯びてきたように感じられる。
読んでてはっきりとここが変わった、一皮剥けた、という何かがあるわけじゃないのですが、傑出した力がなくても、やるべき事を見失わず、どんな困難を前にしてもやり遂げる達成力、というべきものを持ち合わせているんでしょうか。どんな優れた能力を持っていたといたとしても、その力を目的のために揮えなければ意味がない。その点、彼は自分の持ちえるだけの能力をボロボロになりながらも最大限に揮って、なすべきことを成し遂げてる。
最終的にどちらが大した奴かといえば、言わずもがなでございましょう。
実際、こいつは大した奴なんだろう。

ファリアも、ここに来て急速にカインとの距離感が変わってきたように思える。最初の頃は、本当に異性間の意識なく友人・親友・気の置けない仲間という風情だったのに。
あれかな。イングリドとの火花散らす敵対関係が、逆にカインを意識させてしまったのか。
ハイラムにカインから貰った指輪のことを聞かれてうろたえてる時の反応なんか、どう見ても指輪をくれたカインを意識してるようにしか見えない反応だったしなあ。
おまけに、一番つらいときに見せた本音と、カインへの呟きは、あれはもう決まりでしょう。本人がはたして有意識下ではっきりとそれを自覚しているかは定かではありませんが(他人だけではなく自分にも意固地な部分がある女性ですし)、ありゃあ青信号ですよ。
しかも、今回明らかになった真相を見るかぎり、どうやら障害はあれども、立場上ですら完全に報われぬなんとやら、にはならずにすむ可能性はありそうで……。
ハイラム兄ちゃんも、相手の身分云々には言及してなかったし。無茶苦茶、ハードルは高そうだけど(笑

今回思いっきり見直したのがレイク。彼、カインと親友と言いながらも、どこかで一線を引いてるような関係に見えてたんだけど、事件後に見せたカインへの本音は、ちょっと感動してしまった。レイクの性格からして、こいつ本気で感謝してるんだなあ、と。嬉しかったんだなあ、と。
うん、胸が熱くなったさ。
なんか、これでこいつら、本当の親友になれた気がする。カインは、最初っからそのつもりだったんだろうけど。

個々の物語だけではなく、国家間の駆け引きやそれぞれの国内の政治的・感情的対立など、政争劇も激化してきて、これはますます面白くなってきましたよ。
先が楽しみになってきた。