機工魔術士 -enchanter- 17 (ガンガンWINGコミックス)

【機工魔術士 -enchanter- 17】河内和泉 ガンガンWINGコミックス


……終わった。終わったぁぁ。終わっちゃったぁ。
機工魔術士シリーズ、ここに完結。なんで終わるんだよぉ、唐突すぎるじゃないかよぉ。と思ってたわけなのですが、読み終えて納得。
フルカネルリから託され、受け継いだもの、晴彦自身が求めたもの。今までのエピソードで探求し、思索し、悩み続けたものが、このカリオストロとの闘争、論争、理論の構築により、結実したのだから、これはもう終わるしかない。
すげえ。作品の命題たるテーマを物語の中で立脚したのみならず、絶句するほどに叩き上げ、鍛造し、理論を戦わせ、完膚なきまでに文句のつけようのないアンサーを構築しやがった。
今回、カリオストロと晴彦は血と肉がぶつかり合う物理的闘争で激突しているわけですが、そりゃもうこれでもかというくらいにバトルバトルバトルな漫画なわけですよ。作画的にもスピード感、激しさ、熱さ、何もかもが一級品のガチンコバトル。
なのに。そんなのは二人の戦いにはまったくの余儀にすぎない。彼らの真の戦いは、まさに各々の信じる理論、すなわちそれぞれの存在のあり様の衝突なわけですよ。
これは剣戟でありながら、論戦であり、戦う相手はむしろ己という戦い。晴彦にとっては、この戦いは自己の鍛造だったんじゃないだろうか。カリオストロと主張を戦わし合い、お互いの相容れぬ理論をぶつけあうことで、自分にも分っていなかった自らの在り様、周囲の人間との関係の意味、ユウカ姉への想いの真実、フルカネルリという男の願いと、遺されたユウカナリアの心との接し方。それらすべて、まだ何も分かっていなかった鋼の塊たる自己の在り様を、ユウカナリアとの出会いからこれまで培ってきた経験、技術、想いを鎚として、カリオストロとの闘争を炎とし、自らへの疑問を冷水として、鍛えて鍛えて、そしてついに一つの刃が完成を見たのではないか。
それは終わりではなく、ひとつの始まりに過ぎないにしても、まだ何も分からない男の子としてスタートラインにすら立っていなかった晴彦が、己が進むべき道を見出し、男として歩き始めた記念すべき一本目の刃。
頑張る男の子が一人の男となる鍛造工程を余すことなく堪能できた、これは本当に素晴らしい傑作だった。
素晴らしい傑作だった、大事なことなので二回言いました。

世界で、二番目に好き。

それは、とても素敵で、痛切な告白で。
色々あったけど、本当にいろいろあり過ぎて、痛いくらいにお互いのことが分かってしまったわけだけど、世界で二番目に好きな者同士、ハルヒコとユウカナリアは、これからも上手くやっていくんじゃないだろうか。
フルカネルリは、偉大と言うべきか、いや男としてあまりに魅力的で大きい男だったんだろうなあ。晴彦は、でも着実に彼に近づいているように思う。容姿だけじゃなく、その魂まで。だからこそ、ユウカナリアは……。
指針となるべき男の背中を垣間見た晴彦は、幸福だよなあ。だが、その高みを認識しながら、進める彼もまた大きな男なのだろう。それだけ、己を鍛えたんだろうけど。
うん、なんか自分でも何言ってんだかわかんなくなってきた。まとまらないまま垂れ流してるからなあ。
ただ、この作品、恐ろしいほどおもなキャラクターたちを解体し尽くして深い深いところまで掘り下げて、余すところなく審らかにしちゃったからなあ。触れようがないんですよ。入力情報が完璧すぎるんで、こうして出力しようにも、どう書こうと自分と言うフィルターを通していることで変質してしまうから。
この衝撃は、どうやったって生で本読んでもらうしか、その数パーセントも伝えられる気がしない。
正直、ここまで入り込む余地ない作品だと、アニメ化とかしてもまず別モノになっちゃうよなあ。
前に黒田洋介氏が自分が手がけたいみたいなこと言ってたけど……これはやるとしても、ハードル高い挑戦になるぞぉ。

別作品の【賽ドリル】でも如実に感じたけど、この人己の創造物に確固とした哲学を保持してるんですよね。どっからだろう、最初は、最初のころの【機工魔術士】には、そんなもの感じなかったのに。凡庸なものしか感じなかったのに。
いつから、こんな恐ろしいものを書く漫画家に革新したんだろう。もう一度、自分の書いた感想を振り返ってみるんもいいかもしれない。

読み終わって呆けながら、あとがきっぽいものを眺めてたら……番外編がまだあるんですか!?
う、うおおおおおお!!!
ちょっと、正直エピローグがあっさり過ぎてて、落胆してたのが吹っ飛びましたがな!
よし、よしよしよし、まだ戦える。俺は戦えるぞ!
番外編まるまる一冊、いや何冊でも出して結構ですよ?


ちなみに、一番好きだったのは……がんばる男の子な晴彦……なんですが、それを除けばやっぱりあれっすよね、メル姉ですよね。
この人のあり様は、カリスマがありすぎるというか、ひきつけられ過ぎて中てられるというか。めちゃくちゃ酷い人なのに、厳しい人なのに、その言動にはちゃんと優しさがあるんですよね。酷いのに。
客観的にみると、一番世話好きでお節介なような。なんだかんだ言って助けてくれてるし、指針を示してくれるし、出しゃばらないし、バシンと言うべきことを言うのを躊躇しないし。
正しさの揺るがない人。その正しさはメルクーリオ個人の正しさで、世間的、多数的なそれとは違うはずなんだけど、でも彼女の正しさはキツくて無情で辛辣でも、とても正しいように思えるのです。だからこそ、みんなになんだかんだと頼りにされるんだよなあ。彼女も突き放すような態度とりながら、決して見捨てないんだから、ほんとに性質が悪い。最初の登場の仕方なんか、すっげー悪辣なポディションだったのにねえ。

あー、番外編むっちゃ楽しみ。いやっほぅい