戦場のエミリー―鉄球姫エミリー第四幕 (集英社スーパーダッシュ文庫 や 2-4)

【戦場のエミリー 鉄球姫エミリー第四幕】 八薙玉造/瀬之本久史 スーパーダッシュ文庫


前巻、花園のエミリーの宣誓式のシーンで「おっ!?」と思わされる行動を取っていた人がいたんですよね。猿騎士エリオット。半島貴族でエミリーとガスパールを除けば王位継承権の最上位にも関わらず、かなりひどい評判の男で、実際にそれまでのシーン、品性下劣の野卑な振る舞いしか見えず、途中までいわゆる今後の敵役の一人なんだろうというくらいに見てたんですが、宣誓式でのガスパールの宣言に、幼王への真摯な敬意を垣間見せた彼の態度に「おっ!?」と思わされたのですよ。
こいつ、もしかしたら今後重要な役どころ、それもエミリーやグレンの味方的な立場となるんじゃないだろうかと。
どうやらこれ、正解だったんじゃないでしょうか。
パーシーの謀略で内乱状態になった戦いで、グレンたちノーフォーク公爵軍は半島貴族連合と相打ち、グレンと猿騎士は刃を交えるわけですが、この兄ちゃん、粗野だが発言聞いているとバカじゃないんですよね。口は悪いが発言自体は理路整然としているし、むしろグレンより大貴族の長子として視野の広い見方をしている。
加えて、後半の破滅的展開のさなか、敵であるグレンの決断で生き残ってるんですよね。
元々戦闘力のある味方が少ない上に、今回の一件で国内全体が壊滅的な打撃を受けた中、彼の存在はグレンたちにとってなかなかおもしろいものになってくるんじゃないでしょうか。

一方で、グレンも今回は大いに活躍したなあ。エミリーを置き去りにして戦場に出てしまったことも、決して考え無しのことではないですし。エミリーもあとで認めているとおり、彼なりの最善だったのではないかと。彼にとっての騎士の在り様、大切な人を守るやり方と言うのは、傍で一緒になって傷をなめ合うのではなく、ただ言葉なくとも戦うことだったのではないかと。それは、不器用ですけど、実直で、なによりエミリーみたいな女にとっては、一時的には不興をかっても最終的にはそうした行動を選ぶ男を好ましく思うのではないでしょうか。
だいたい、眼の前にいるより手の届かないところで心配させている方が、女心は揺らぐものです、その点グレンは無自覚ながらかなり上手くやったのではないですか?(笑い
これまでは、まあなかなか気に入ってる、ぐらいの好意だったのに、今回のエミリーは、失意と絶望に打ちひしがれ、拠り所を求めていたのもあるのでしょうけど、グレンに対して見せた想いはかなり強く、異性に対するそれを垣間見せるものだったんじゃないでしょうか。
おかげで、底の底をはいつくばるような精神状態の描写が続いたことも相まって、すべてを吹っ切り、窮地のグレンを救いに現れたときのフルスロットルなエミリーの登場シーンは、最高に気分が高揚させられました。
わりと陰険な暗殺劇での戦闘ばっかりだったのであんまり分かってなかったんですが、華々しい戦場でのエミリーは、本当に華のある姫将軍じゃないですか。あの口汚い罵詈雑言ですら、意気軒昂で頼もしく思えてくるくらい(笑

いや、これは面白かった。どん底まで落ち切り、潰滅的な被害を受けながらも膿を出し切った以上、これからは反撃に転じてくれるはず。
次の巻には、さらなる期待が膨らみます。楽しみ♪