カンピオーネ!―神はまつろわず (集英社スーパーダッシュ文庫 た 9-1)

【カンピオーネ! 神はまつろわず 】 丈月城/シコルスキー スーパーダッシュ文庫


神様を殺すとは如何なることか。
神殺しってと、即発的に思いつくのはあれだ。中二病とかいう単語で括られてしまう単純な武力・戦闘能力で、神様と呼称されるほど強大な存在を叩きのめすパターン。私は、これだって書き方次第でとてつもなく面白くなる手法だと思うんですけどね。好きですよ、そういうの私。
ただ、それは類別するなら物理的な手段による強殺であるわけだ。しかし、神を殺すというのは別に物理的手段に寄らずとも行えることに注目すべき点がある。概念の抹殺、神性の剥奪。伝承の根絶。
基督教における悪魔が、もとは異教の神であることは有名な話だし、身近な日本の妖怪も、いくつかは堕ちた神のなれの果てである、なんて論もわるわけで。
面白いのはこの作品、カンピオーネと呼ばれる神殺しという存在は、まったくと言っていいほど先ほど述べた神殺しの前者的存在にも関わらず、主人公が神と対峙した際に、神を倒すための技は後者――神の来歴を審らかにし、その神性を解体することで、神にダメージを与える、というところなのである。
個人的に大傑作認定している霜島ケイの【封殺鬼】は、十数巻という巻数を費やして、敵である神の正体を解き明かす探究をやってのけたわけですが、この【カンピオーネ!】のアプローチは、【封殺鬼】や【京極堂シリーズ】のそれに似ていて、なかなかに興味深く、面白かったんですよね。
まあ、その肝心の神性の解体自体、甘いっちゃ甘いのですが。考察と解釈、其処に至るまでの過程がまるでなかったからなあ。確かに、活劇的神殺しな要素も捨てられない以上、一巻でラブコメとバトルを踏まえながら、地道に資料の探索やフィールドワークを重ねて神様の正体を解き明かしていく、みたいな学術的闘争までフォローしろ、というのは酷な話なのかもしれないけど。実際にそれやっちゃうとなると、京極堂シリーズみたいな鈍器になるか、封殺鬼みたいに超長期シリーズになるか、だもんなあ。
とはいえ、なんとかこの一巻でラブコメとバトルと神の解体をちゃんとやってのけてるのも確かで、凄いっちゃ凄いし、ちゃんとエンターテインメイトとしても面白いのだ。バトルはキッチリ盛り上がるし、ラブコメはヒロインのエリカが独壇場で存在感を示しているので、自分的には大盛り上がりだし。
いや、私、エリカみたいなキャラ大好きなのですよ。好みど真ん中なのですよ。
強気で傲慢で自信家で天上天下唯我独尊、それでいて主人公である護堂への好意を隠そうともしない。
まあ、あれだけ偉そうにしながら好きだ好きだ、と言われても本当か? と信じられない護堂の気持ちも分からないでもないので、ちょっと引き気味の彼の反応も決して嫌じゃないんですよね。
それでいて、彼女からの好意には引いてる癖に、利用されることに関しては何の含みもなく、困ってるなら友達なんだから助けるぞ、という迷いなく渦中に飛び込む事を厭わないまっすぐさは好ましい限り。
エリカもそういうところに惚れてるんでしょうけど、この娘も好意は隠さない癖に変にその辺茶化したり、本音の本心はあんまり見せたがらない捻くれたところのある素直とはかけ離れたところのある娘なので、なんだか噛み合ってるのかすれ違ってるのか、ようわからんコンビなんですよね。
それがまたいいんですが。

うん、なんにせよ思ってたよりかなり面白かった。癖は強いけど、それがまた癖になる、という感じで。快なり。