ガンパレード・マーチ九州奪還 3 (3) (電撃文庫 J 17-21)

【ガンパレード・マーチ 九州奪還3】 榊涼介/きむらじゅんこ 電撃ゲーム文庫


う、うわぁぁぁっ! なんてこった。し、死んじゃった。死んじゃったよぉ(愕然
しかもこれ、……なんてこった。

ついに、ついに。5121小隊ではないものの、メイン級の登場人物に戦死者が。しかも、本来なら戦死とは一番程遠い場所にいるはずだったあの人が。
やっべえ。これ、ショックだ。しかも、あんな死に方。ひどすぎる。
九州撤退戦、山口防衛戦とあれ以上悲惨な戦場があるものかと思ってたけど、登場人物の死亡フラグ頻度が半端じゃねえですよ、これ。
矢吹少佐なんか、本気であの状況、死ぬかと思ったじゃないですか。他にも紅陵の女子とか、やたら持ち上げられてる堅田の石丸隊長とか(今回、口絵に初イラストついてましたけど、この人男前すぎる……女なのに、全然見えないw)、合田隊長なんか、次はこの人じゃないかという不安感がたっぷりで。荒波小隊の連中だって、次回久々に最前線に出るみたいで、ヤバそうだし。いやいや。荒波少将だって、こうなってくるとヤバいんじゃないかと。
不意を突いて、いきなり植村さんとかあたり、死んじゃいそうな感じするし。
なんかもう、5121小隊のメンバー以外、全員が死にそうで異様に怖い。山口戦線までは、こんな雰囲気なかったのに。
連戦続きのためにろくな休息もなく戦い続けているために、ついに肉体的なそれではなく、精神的な疲弊の臨界に達してきたようなキャラクターたちの描写が続いているからだろうか、とにかく危うくて仕方がない。
戦争神経症なんでしょうね、これ。特に、今回なんか壬生屋の疲労が限界を超えてしまってからの壊れっぷりは、見てられないくらいだったからなあ。精神的支柱である善行が負傷して、一時的に意識不明の状態に陥ってしまったのも大きかったんでしょうが。原さんまで、一瞬ぶっ壊れたからなあ。森を除いたら、精神的に一番追い詰められてるっぽいのは原さんなんですよね。それでいて、この人は整備班の隊長として、みんなのお姉さん役としてみんなを支える立場であり、その役目を絶対に放棄しない人でもあるから、余計に危うい感じがするんですよね。それでも、善行が健在ならなんとか保ち続けることができたんでしょうが。
もし、本当に善行さんが死んでたら、死んでなくても危険な状態に陥ってたら、原さんも絶対一緒に壊れてただろうし。そうなれば、必然的に5121小隊は崩壊していたでしょうし、連鎖的に芝村支隊も機能停止、九州侵攻軍はえらいことになっていたに違いなく。
いや、現に善行の戦線離脱は重大な影響を九州戦線に及ぼしたわけで、あの人の戦死も、善行の負傷が遠因になってるんですよね、これ。

嫌らしくも実にうまいのが、【政治】の描写。あれほど明確な作戦失敗にも関わらず、山川司令官のあの寝業師と呼ばれる政治的立ち回りは、むかっ腹が立つと同時に、感心させられてしまう。
これ、この責任の所在の有耶無耶の仕方は、もはや芸術と言ってもいいくらい。旧日本軍にはこういう人、よく居たわけですけど、こういうの書ける人って滅多いないと思うんですよ。だって難しいもん。単純明快なバカな悪役の方が、簡単に書ける。こんな妖怪変化みたいななんだかよくわからないうちに責任の所在がうやむやにされて、気がつくとむしろこっち側が悪い、みたいな形になってしまってる、みたいな手練手管、書こうと思ってもなかなか書けませんよ。
ほんとに凄いと思う。
最前線での一兵士の悲哀から、司令部での魑魅魍魎的百鬼夜行な駆け引きまで、軍隊というものがここまで徹底的に、爽快感とはかけ離れた見たくないものまで余すところなく描きつくしている戦記ものって、稀少だと思いますよ。だからこそ、この榊版は傑作の名をほしいままにしてるんでしょうけど。

山口防衛戦の立役者、荒波・岩田コンビが九州に戻ってきつつも、山川・泉野のラインも未だ力を握ったまま。肝心の善行さんは、またも敵派閥の策略か、東京に呼び出しを食らい、九州戦線の大混乱に伴う政治的暗闘の渦中に飛び込みこれを調整するはずだったあの人は……謀殺されてしまう。
混迷は、続きそうだ。

でも、希望はやっぱり5121小隊。今回、精神的限界点を跨ぎかけた人があまりに多くて、かなりヤバげだったのですが、ある意味今回でピークは越えた感もあり、公園でのどんちゃん騒ぎは、まだ無理やりはしゃいでるみたいな感じもありましたけど、あの二人も戻ってきて、5121小隊の在り様みたいなものも再認識できて、なんかこう…ひと山越えたんじゃないでしょうかねえ。
……その分、他のところが本当にヤバそうで、心臓痛いんですけど。