PSYCHE (プシュケ) (SQUARE ENIX NOVELS)

【PSYCHE (プシュケ) 】 唐辺葉介/冬目景 SQUARE ENIX NOVELS


さながら、心地よい褥のように甘い狂気を誘ってくる。陶酔にも似た悪夢。ぐにゃぐにゃと歪みまどろみ、境を無くしていく現実と幻想。
何が現実で何が幻なのか。それはもう、最初から主人公にはどうでもいいことなのだろう。ある種の達観は、諦観であり、絶望であり、もはやそのいずれでもなくなっている。
それは、生きているといえるのだろうか。
そもそも生死の区別になんの意味があるのだろう。夢現の区別になんの意味があるのだろう。
読んでいて、不安定になってくる。足場が崩れおち、何もない虚空に投げ出され、漂うような浮遊感。それでいて、心は凪の海のように静まり返っていく。自己が曖昧になっていくような不安感に怯えながら、同時にどこか褥に包まれて眠るような安らぎと安堵感を覚える。
これは、退廃なのか。堕落なのか。破滅なのか。
切望するでもなく、拒絶するだけでもなく、ただ受容することの恐ろしさよ。羨ましさよ。
ジリジリと焦がれ、そして恐れを抱く。

ああ、なんて――気持ちの悪い、美しさ。

この作品の著者は、シナリオライターの瀬戸口廉也氏なのだという。あいにくと、私は氏のゲームをプレイしたことはない。
それは幸いなことなのか不幸なことなのか。
これは、尋常ならざる奇作である。