とらドラ 8 (8) (電撃文庫 た 20-11)

【とらドラ 8】 竹宮ゆゆこ/ヤス 電撃文庫


私、このとらドラのコメディパートは徹底的に肌に合わなくて置いてけぼり状態だったのですけど、今回はシリアス展開大増量キャンペーン中ということで大いに楽しみまし……楽しみ?
うん、楽しむものですよ、若者の苦悩と痛みというものは。
でも当事者は? 彼らにとって恋愛とはなんなんでしょう。少なくとも、甘く心地よく浸るようなものではないのでしょう。恋は痛みで苦悩であり、息苦しさと胸をめった刺しに切りつけられるようなものでしかないように見える。
あなたたち、恋をして、幸せですか?
誰かを恋することとは素晴らしいことなのですか?
自分自身を傷つけ、自分を大切に思ってくれる友達を傷つけ、自分が愛する人を傷つけて、それでも想いはなかったことには出来なくて。
彼らの想いの果てには、いったい何が残るんだろう。少なくとも、誰もが笑っていられる未来は見えてこない。というよりも、誰もが苦い思いを噛み締める想い出しか残らないような、絡まり合った感情の糸。
今回ばかりは亜美に共感していた。自分を誤魔化し続け、黙々とお互いから伸びる想いの糸を二度とほどけぬような雁字搦めに引き結んでいく竜司たちへの憤り、怒り、憎しみすらあったかもしれない。亜美本人をも無自覚に絡め取っていく彼らの無責任さに。一番全体が見えているが故に、当事者にもなり切れず、彼らの愚かさばかりが目に入り、自分もその愚行の一翼を担ってしまう情けなさ、バカさ加減に、亜美がどれほど絶望と憎悪と後悔を覚えていたのかを思うと、なんか泣けてくるくらい。
何かを、誰かを選んでも、捨てたモノを忘れることはできないだろう。その捨てたものは瑕となって心に残り、選んだ道に影を落とす。彼ら若者にはその影を無視するだけの厚かましさはなく、優しいが故に傷は痛みとなってその人を苛み続ける。だとすれば、そこに幸せはありえるのか。
あまりにも絡まり過ぎた糸。もはや断ち切るしかないかもしれないその拗れは、切り捨てられたモノからの祝福を素直に受け取るだけの余裕を失わせしめてしまったように見える。今回のエピソードが残した傷痕は、若者たちが自分以外の誰かのために良かれと思って選んでしまった選択は、もはや消し難いものとなってしまったんじゃないだろうか。

なんとなく、今のままだともう、学校を卒業したら二度と会うことのないまま、青春の苦い一ページとして思い出に残るだけの関係になってしまうような、そんなセピア色のイメージが覆い始めてる、そんな感じ。

それはそれで、有りな気もしないでもないけど。
それもまた、ひとつの青春の在り方とも言えるのだし。